発行者 岩城生産システム研究所

編集者 IPSインターナショナル
   平成19年12月15日発行 第056号
 ― 目 次 ― 

   「年末年始休業のお知らせ」 岩城生産システム研究所 業務部

   「ものづくりの楽しさ」 NEC 澤村 治道 様

  
 「開発革新活動の取組み 具体例(1) 業務体系の整備」 岩城生産システム研究所 今井 嘉文



  年末年始休業のお知らせ


平成19年12月26日(水)〜平成20年1月6日(日)まで弊社事務所は年末年始休業とさせて頂きます。
ご迷惑お掛け致しますが、ご了承戴きますようお願い申し上げます。

早いもので、今回号が今年最後の「岩城生産システムNEWS」となりました。
本年は大変お世話になり、どうも有難うございました。
来年も皆様と共にトヨタ生産方式についての知識を少しずつ深めていければと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。

以上




 「ものづくりの楽しさ」

NEC  澤村 治道 様


岩城生産システム研究所のホームページをご覧の皆様、こんにちは。私は製造業に勤めて28年。いま、スタッフとして「ものづくり強化」を担当しています。ところであなたは、どんな方ですか?製造業にお勤めの方でしょうか?それとも流通系?あるいは、ご家庭を守る主婦の方でしょうか?ここにアクセスしたのは、何か理由があってのことでしょうね。最近会社がトヨタ生産方式を導入しようとコンサルタントを送り込まれた、とか? もちろん、このHP主催者の岩城さんにお世話になっている方々も多いことでしょう。

ここには、各社の皆さんの汗と知恵が脈々と受け継がれています。葛西さんの「レジの並びとTPS」宮沢さんの「山手線にバスや自転車」なんて慧眼には脱帽だし、久保田さんの「工程マンが要なくなった工場」とか、「なぜか立っちゃった」福原さんには、やってみることの大切さを教えられます。そうして改善をしてみると「これまで、いったい何をやってたんだろう」って、気持ちになります。私もそうでした。この15年間、何度も何度も…。

ここの主催者である岩城宏一さんは、かつて製造業の社長をされていた頃にトヨタ生産方式と出会われました。その従来の生産方式との違いは、人間観の違いにある、とおっしゃいます。人は管理しなければサボるものではなく、制約を与えなければ自ら力いっぱい働く存在である、という考え方です。そのことを、岩城さんは、現場指導会を通じて私たちに何とか伝えよう、としてくださっているし、このWEBニュースを通じて皆さんにも伝えようとしてくださっているのだと思います。

ミスチルって、ご存知ですよね?桜井和寿さんの曲づくりと、小林武史さんのプロデュースで人気のMr.Childrenに、『彩り』という唄があります。

自分の仕事は、目の前に並べられた仕事を手際よくこなしていくだけの毎日。毎日の小さな努力を、誰も見てくれていないかもしれないけど、でも自分の作った製品が世界の誰かを喜ばせているって考えるだけで、ちょっと自慢したい気分になる…そんな唄です。こんな素晴らしい世界が、ものづくりの世界なんだ、っていうことを、私も岩城さんから学びました。素敵な曲ですから、ぜひ聴いてみてくださいね。

いま、世界の多くの人たちが、これまでにないほど多くの工業製品を利用しよう、という経済の変化が起きています。ものづくりの国「日本」に生まれた私たちは、ただものが作られて消費されていくだけではなく、地球環境を維持し、多数の人々が働く豊かさを実感できるようなものづくりをリードして行きたいものです。いま、伝統技能の復活、技能五輪への大勢の来場者やマスコミの扱いなど、ものづくりの再発見の時代が来ています。私たちは、そんな時代を作る役割の一端を担うつもりで働いていきたいと思います。



以上











妻と共に紅葉の高尾山にて





 「開発革新活動の取組み 具体例(1) 業務体系の整備」
岩城生産システム研究所 今井 嘉文



 前号まで、開発革新活動の取組の概略について説明をしたので、理解をさらに深めるために、より具体的な事例の紹介を行うことにした。開発革新の進め方の切り口として「マネジメントを主体とした改善活動」と「品質とコストのつくりこみ活動」で整理してきたので、まず前者のマネジメント改善の具体的活動の実施例を挙げて行きたい。

1. 新製品開発の業務体系の整備
 新製品の企画段階から量産までの展開ステップは、最初に、新しく売り出す商品としての「商品企画」検討段階があり次に「製品化企画」「開発設計」「量産準備」段階と進み「量産」にはいることになる。量産品も商品ライフがくると必ず「打ち止め」があり、後は補給品としての対応が要求されることになる。この一連の仕事の流れのそれぞれの節目に「会議体」を設けなければならない。具体的には「商品企画会議」「製品化企画会議」「設計評価会議」「量産移行会議」、量産3ケ月後の「総括評価会議」であり、商品ライフ終了の「打ち止め会議」を含めると6つの会議体になる。それぞれの会議体では各ステップでの仕事のやり方が適正であるか、関係部署がキチンと自分の役割を果たしているか、出来栄えもあるべきレベルに達しているか、関係各部署責任者の参加のもと、経営トップの決裁者に判断を委ねる。残された問題があれば課題としてフォローさせる等メリハリを付け、決裁者承認を持って次のステップに進める。この業務体系整備で、まず最初にやることは、この仕事の流れのフローを作ることである。縦軸、横軸にそれぞれ開発に関係する全部署の部門軸と時間軸(展開ステップ)をとり、現在実施している調査事項、検討事項、打合せ会議等のイベントを時系列に書き込んでいくことである。この場合現在実施の内容が必ずしも満足出来るレベルではないので、あるべき姿を描いて、不足しているイベントを追加していくことが重要である。この作業を機会に自社の開発のやり方を見直し、スパイラルアップさせることが望ましい。さらに重要なことは、品質のつくりこみとコストのつくりこみがこの会議体で明確に報告され、目標に対する達成度がみえる化になっていることである。問題があるままズルズルと開発が進んでしまうことは量産後、品質問題、不採算問題をおこし経営を危うくすることになる。
 開発の展開フロー図が出来たら、次は各会議体での報告事項の検討である。
「商品企画会議」では商品化の可否を審議してもらうため、どういう商品をどういう対象にいくらで売りたいのか、セールスポイント・売上規模・中期経営計画との関係等を明確にした「商品企画書」を準備する。
次の「製品化企画会議」は開発を進めるかどうか、開発の可否を審議する重要な会議体である。ここでは開発する製品をすぐ設計に着手できるレベルまで具体化し、いくらで売ってどれくらい利益を出すか、原価企画目標を明確にした「製品化企画書」を準備する。「設計評価会議」では量産図面の出図の可否を審議するため、それまで検討してきた設計の内容で、設計品質が保証されていることと原価目標達成の見通しの報告書をまとめます。「量産移行会議」では量産化移行の可否を審議するため、量産出図に基づき量産で使う金型・設備の準備を行い、この本型・本工程での量産試作で、製造品質のつくりこみと原価が企画通り仕上がっていることの報告書をまとめます。
「総括評価会議」では量産開始後3ヶ月をめどに製造品質・客先品質・市場品質状況と製造原価の実績を把握し、製品企画書のねらい通りの製品が開発され、品質が確保されているか、原価企画目標に対しキチンと利益が出ているかをまとめ、報告します。
 このように各会議体の報告内容は、関係部署が自分の役割に対し自律的に活動した成果をまとめ上げたものである。「総括評価会議」の決裁を持って、新製品開発の業務取り組みは完了となり、初期流動管理は解除される。その後は、他の号口品と同様な定常管理になる。
 この業務体系の進め方は、新製品の技術難易レベル、売上規模、設備投資規模等経営に及ぼすリスクによりランク分けし、開発展開のやり方をT級、U級、V級と区分することにより、開発効率の向上を図っている。


つづく


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