2019年12月 9日 発行

連載コラム

第199号ヨーロッパから見た日本の物づくり A       岩城生産システム研究所  岩城 康智


アジアにおける製造業の現状
 アジアでは中国が韓国同様に日本を出し抜いて、何しろ世界最大の経済大国ですので、その前には日本はこのまま滅んで行くのではと思われるかもしれません。
 しかし、ここ数年の状況では変化が現れているようです。
私も最近まで中国で生産現場を拝見してきましたが、欧米的管理・生産方法を行っている工場はかなり問題が多いようです。
まず品質が良くない。例えば40人で生産しているラインの後ろに80人の検査員が付いていないと不良が流出してしまう。
検査員の給料は現場の工員さんよりは高いわけで、これでは人件費もままならないし、検査工数の分だけリードタイムが長くなるので、管理も大変。
 外注品質が非常に悪い。基本安ければなんでのアリの部分がまだある上、工程に潜んでいる品質の決め手が理解されないまま作業者に継承されている事例が多く、大量発生系の品質問題でラインが止まることもしばしば。
ただし、中国においても日本的な生産方法を行っている工場は、日本同等に物が作れるのを我々は実証してきております。

アジアにおける製造業の現状
・欧米的経営方式の限界
・検査による品質管理
・管理コストの増加
・まがい物の増加
・環境問題
・労働者の意識の問題

 どうやら欧米的な生産方法は長続きしないということになります。
たぶん原因の一つは、欧米を含め中国のワーカーさんと日本の違いがあり、欧米流では言った事も出来ないもしくはしない。
または仮に出来たとしても言われたことしかしない、もしくはしてはいけないというのが一般的で、一部の日本の経営者にもそれが正しい経営であるようなことを言う方がいて困ってしまいます。
なぜならば、そのような現場では作業者数名ごと常に監督者が必要になり、したがってコストは上がるし、改善がなかなか進まないのもそこが原因なのです。
 一方それに比べると、まだ日本は元気?があるように思います。  
というか、日本が頑張ってもらわないと、この先大変なことになるのが、実は今の状況です。
例えばかなりの部分の機能部品は今や日本で調達するのがコスト的にも、リスク的にもメリットがあり、現在・将来では日本の部品抜きで中国生産は不可能になりつつある。
また、欧米においても日本の製造業の開発力を重視しており、どこの会社でも日本メーカーとの技術提携を希望している。
これはかつて韓国・中国もそうであったのですが、単に日本製品のコピーでなく、パートナーとして共に新しいマーケットを作ろうとしているのが、大きな違いではないか?
例えば一例として、イギリスではポスト・ブリクストに日本の技術を求めており、たぶんこれがこれからのトレンドになって行くかもしれない。
日本の強みは、品質と納期、価格の競争力は同等の商品で比べれば十分にある。
問題は、マーケットのニーズに合っているのかということなんですな。
過剰な機能をつけてその結果として競争力がなくなっているのではないか。
また、安易に日本市場にのみ売り込み世界でのビジネスチャンスを失っている。
世界に出て行くにあたって十分な筋力をつけて行きたい。
特にコストについては重要なので、次回まとめてみたいと思います。
(以上)