第201号 | ヨーロッパから見た日本の物づくり B | 岩城生産システム研究所 | 岩城 康智 |
1. 製造コスト
(ア) 世界のどこで作るのがいいのか?
@ 本来消費地に近いところで作るのが基本。引きに合わせて作る。
これが最も無駄の少ない作り方。作りすぎがない。
1. 引きに合わせて作れる
2. 物流コストの低減
A 労働力の確保ができるところで作る。
1. 安定した人材開発
2. 治安の維持
B 原材料の入手の容易なところ。
(イ) 原価における労働賃金について。
@ 製造業において労働賃金の原価における割合は、10%前後が直接人件費で、 間接人件費が約15〜20%、物流・
管理費が輸出・輸入部品の場合は15%かかる。
A 直接労働費を減らしたいのならば自動化すればいいのだが、注意しないと維持費で消えてしまう。 (稼働率の問題・
作りすぎる問題・工法の秘密が漏洩する問題)簡易自動化。
B 一人当たりの付加価値を上げることが重要。賃金はその地域の同業者平均で十分。(足らないと直ぐやめてしまう。
多いとモラルが下がる)加工高の考え。
(ウ) 開発コスト
@ 日本1に対して欧米は8〜10。速度が遅い。(バイオ・ソフト系は日本の環境の問題で出遅れているだけ)
A 特に期限が守れない。したがって、予算が守れない。そのしわ寄せが使用する部品原料に行ってしまう。
開発コスト
日本は開発をするには最適
開発コストは海外では膨大になる
量産対応ができない
品質問題に対応できない
海外での納期の問題
基本守れない
遅れた部分は全て生産準備にしわ寄せ
(エ) 管理コスト
@ 管理部門の生産性は生産活動のサポートとして、どれだけ付加価値を生んでいるかということで、これからの課題。
A 欧米の間接作業者はIT化によって激しく減少している。
日本の製造部門の競争力は欧米の3倍。管理部門は半分以下。
B 日本の働き方改革は手ぬるい。会社のトップとして、勇気を持って改革が必要。(残業の話。目標設定の話)
日本のコストは世界的に見て最も安くなる可能性がある。
一般に言われている中国が安い等は単なる為替レートの問題で、生半可な気持ちで出て行ったら、痛い目を見るし、
安易に中国製品を買うとその後の品質保証(部品・完成品)コストがかかるので、長期的に見て、破綻してしまう。
管理コストについて
・管理部門の付加価値
生産活動に対してどれだけサポートできているのかを明確にする。
・欧米では最近急速に合理化されて来ている
IT・IOT・AI化により間接業務が激変
・日本の企業に望まれる改革
今までの慣習にとらわれない思い切った意思決定
新製品開発業務の改革
・新製品開発は世の中の変化に対して、企業が存続し続けるための最も重要な直接的な手段である。しかも最近は、
機能特性の普及により、価格面での競争が表面化し、その競争力の有無が製品の成否を左右する重要な要素と
なっている。
・製品の売価は、直接の担当部門の製品開発部門のみならず、製品の原価に影響するすべての部門の「経費対効果」
によって定まる。
全組織の改革の手順
・製造業のハブ的機能を持つ生産部門から始める。
・その部門に最も密接に関係する新製品開発部門に改善の活動を波及させる。
・徐々に全社に拡大してゆく。
2、 普遍性
(ア) 日本人の考え方の本質として、普遍性というのがある。これがそのままビジネススタイルとなっており、日本人
のビジネススタイルとして特徴的である。(継続を目的とする、分業化がはっきりしている)
(イ) 一方最近はメディアを中心に欧米的ないわゆるゴシップが目立ってきており、正直煩わしい。
(ウ) とんでも無いことを言うとなぜかそれらしい。PCDAdjust・OODA・MMT
(エ) バブルが崩壊してからも何とかやってこられたのは、この日本人の普遍性があったためで、今これに学びたいと
思う気持ちが海外からの観光客が増えている理由。特に若者。昔は富士山芸者だったのが今は変わった。
(オ) 日本人の公平性・社会性・敬愛。なんかラグビーにつながる!
(カ) 昔日本に旅行に行った人の話で、金を基準とした社会が崩壊してゆく中で、日本人の普遍性が注目されている。
3、 新製品開発業務
(ア) 日本のものづくりを続ける上での力。海外ではまずうまくいっていない。なぜなら高いもの(高付加価値品というが、
実際は不必要な機能・装飾)を作ろうとしているだけではダメ。
(イ) 作ったものが売れないのは開発力がないから。
4、 これからの方向性
(ア) まとまることによる強さ。管理システム。物量網。特許の管理。人事管理。
(イ) 情報の共有。IOT。クラウド。設備情報。
(ウ) 人材開発。改善活動。
トップに要求される資質
決してあきらめないこと。
自分(自社)の弱点を客観的に分析すること。
設備を簡単に買わないこと。(簡便自動化)
常に人材を育てること。
現地現物。(メディアに惑わされないように!)