2019年9月 10 日 発行

連載コラム

第196号「できるまでやる」 岩城生産システム研究所佐藤 裕孝

 支援の初期段階では「このようにして下さい」というように、具体的な改善策を指示いたします。講義をいくら行っても、自分の現場を見ていきなり応用して考えることは結構むずかしいからです。「先ずはやってみろ」ということで具体的に改善策を示し、実践していただいて効果を実感して欲しいのです。
 活動も回を重ねてある程度経験してきたら、「この工程は別の場所で行ったほうが良いのではないですか?」「不良を減らすためには、このような作り方にしたほうが良いのでは?」 と疑問形とか提案で尋ねる言い方に変えてゆきます。やらされる活動ではなく、自分たちの心から出た活動にしていただきたいからです。疑問形で話してはいますが、実は現状からすれば最善の改善策だし、自分の中には"あるべき姿"が描かれています。
(時には皆さんが考える具体策に期待という場合も当然あります。そのような時には自分が考えていたよりも大きな成果となり、たいへんな満足をいただく場合が多いです。)
 納得していただき実践までこぎつけるまでも大変ですが、やってみた結果、「とてもできませんでした」「これ以上は難しいです」となることが多々あります。このような時思い出すのは、元トヨタ自動車副社長、大野耐一氏の言葉です。大野氏は現場担当者に改善テーマを出すとそのままにせず、終業時近くになると「どうだ?」と毎日進捗を聞きに来るのだそうです。担当者が「難しいです」と言うと、「そうか、明日もやってみろ、もう一息頑張れ」とやさしく激励しては、翌日も翌々日も同じように激励してゆく。 何日も同じことが続くがついに「できませんでした。これ以上は無理です」と音を上げると、「そうか、できないか、おかしいなぁ.....できないはずはないのだがなぁ.....なぜなら、できるまでやるのだから」
 この話は、大野耐一氏の指導を直に受けた岩城宏一先生からも伺いました。 改善の神髄です。ライバルも企業の存続をかけて熾烈な競争を繰り広げているのです。難しいことに挑戦しそれをやり遂げるから、ライバルを引き離せる可能性が生まれる。やらなければ置いて行かれるだけです。思い起こせば、製品開発や技術開発と同じです。
(以上)