2019年4月 17 日 発行

連載コラム

第192号「トップの強い意志表示こそ、改革の源泉」 (1)岩城生産システム研究所佐藤 裕孝

 前々から興味があった工場を念願叶い見学することができました。
この工場、現在は「生産材メーカーには見えない輝きを持った工場」と言われるほどきれいな工場です。
そして「品質・コスト・リードタイム全てにおいてグループ内で世界トップの競争力を持っている」と評価されています。   
グループ会社の同部門の生産工場は世界に50カ所あるのですが、 この中でこの国内工場は世界三大工場の一つという位置づけです。
  しかしながら1990年代後半には、 設備も更新されず従業員のモチベイションも低くなっていました。 リードタイムもグループでダントツに長く、市場からの要望にも応えられず、売り上げも利益も低くなっていました。

 この時期に就任した事業部長は就任早々に、工場の閉鎖が決定されていることを知らされます。
しかし工場を見た後すぐに本社に飛び、最高責任者に「一度だけチャンスを欲しい、 改革の時間が欲しい」と直談判をし、二年のチャンスをいただきました。 早く閉鎖すべきと多くの反対の声がありましたが、本社のトップは「彼に任せたのだから」と支えてくれました。
 取り組んだのは、5Sの再定義に始まり、意識改革です。 手法はジャスト・イン・タイムです。 実質的には「トヨタ生産方式、 リーン・プロダクション・システム」です。 トップの強い意思表示の下、徹底した活動でリードタイムの短縮・半減を、目標の半分の一年で達成、さらにコスト3割削減を成し遂げました。
改革は経営者や幹部だけでできるものではありませんが、経営者や幹部の一貫した意思表示が活動の加速度を上げました。 なぜなら、このような改革は経営そのものだから経営のコミットがとても重要なのです。

 この事業部長は改革を先導した後に社長を務め、そして後任に後を託しました。 私は幸運にもこの後任社長のお話を伺うことができました。 お話しからは、この活動をさらなる高みの活動へと発展させたトップの強い意思表示の継続性を感じました。

 今や本社もこの活動の素晴らしさを強く認識し、グループ全社への展開を図るまでになっています。 この工場には海外の工場から数ヶ月研修に来て、ここで学んで帰る、 逆に海外からの依頼でこちらから指導に行く。 たいへん経費がかかりますが、その展開の積極性からも本社トップの強い意志を感じます。
 従来の価値観を変えて経営に直結する活動ですから、 トップがしっかりと方向性を表明し続けることが活動のスピードアップ、目標達成には欠かせません。

(次号に続く)