2016年10月 26日 発行

連載コラム

第177号「経営管理の大惨事」岩城生産システム研究所岩城 康智

 かつて世界最大かつ最強を誇った、英国の製鉄の火が消えようとしている。タタに売却されてから8年間たった今、何一つ有効な対策もされず今や毎日3億円以上の損失を出し続けているそうだ。関わっている人々によれば、中国鋼のダンピングだの国内のスクラップ価格の高騰だのもっともな分析は多々あるのだが、何をすべきだったのかについては全く語られていないのは何故だろうか。これは海の向こうの話だけとは言えない。某家電メーカーもいよいよ売られたようであるし、我々の身の回りにもある話と言える。
何が彼らに足りなかったのか?そこに最近の経営における基本理念の弱点があるのではないか。会社は組織で構成され、それぞれに役割と責任がある。それを簡略に表す手法が経営管理である。しかし同じ言葉であってもやり方いかんでは、前記の様に会社を崩壊させる危険があることを心得るべきであろう。
外部的要因を正しく受け止めて、それに対する活動を正しく評価しなければ管理している方向がおかしくなって来る。
今までの経営管理手法における尺度はご存知のように"お金"であるのは、誰にでもわかりやすい点で優れていると言える。問題は過去の原単価を使うので、将来のビジネスチャンスに対しては全く不正確極まりない事が挙げられる。また近未来においても尺度の単位になる貨幣価値の変動に大きく影響を受けることも忘れてはならない。
しかし、残念なことに昨今の経営者の議論を見ていると、これらの管理上の弱点を議論せずに、予算未達成の言い訳にしか使っていないのは残念と言える。
前にあげたような会社は、利益を生もうとする意識はあったかもしれないが、評価する基準が不適切なために、組織が環境の変化について行けずに残念な結果となった訳である。その挙句、各部署が自分たちが気づかずに失ったチャンスの末に、タタの様に消えてゆくのは経営管理の大惨事の一例と言える。
読者の皆さんの職場において、各部署はそれぞれに経営管理項目を持っているはずであるが、もう一度内容を精査していただきたいと思う。