連載コラム

第174号「流れで作る」岩城生産システム研究所岩城 康智

 単純なものを除いて、ものを作る活動の中でワークは様々な工程を経て完成品になるのですが、各工程としては最大限な生産性で作業を続けようとしているのが一般的です。しかし、ワーク(製品)の立場としては、早く最終工程を終わらない限り商品にならないので、スムーズに各工程を繋いで行かなければ作業者の努力も報われないわけです。つまりライン全体に最低、停止する、開始するという機能を持たせないとなかなか思ったような改善結果が出ないわけです。作業者にペース配分を任せる(若しくは管理者による進捗管理)のも解決策とはなるのですが、作業者には良いものを作ることに集中してもらったほうが前向きかつ現実的と言えるでしょう。
要はラインに自律神経を持たせたいのです。
1、 各工程間の仕掛かりを持てないようにする。工程間にワークが置けないように、また置く必要があるならば数を決めて、必ずその数だけいつもあるようにする事。これをフルワークというのですが、ラインでの作業を行う上で、最初に覚える基礎であり、最も大事な事ですので、作業者は100%理解して必ず守るよう指導してください。
2、 ワークが“フル”で作業は停止する。ワークが“フル”の時に当然作業者は次工程に進めないのでその場で停止します。これが次に重要なことですが、仕掛かりの多い現場で働いていた経験のある作業者にとってこれは非常に違和感があると思います。しかしこれを破って作り続けても必ずまた止まることになるので、必ず止まるようにしつけてください。
3、 ワークが使われて“空”ができたら作業を開始する。待っていれば次工程が追いつき、“空”が出来るので直ちに作業を開始する。
ここまでできればラインは自律神経を持ったことになります。ただし、これは次工程がすぐ隣にない場合は工夫が必要になります。
次工程が離れていて、30分に1回取りに来るとします。(次工程に“持って行く”ではなく“取りに来る”のが肝心なところですので注意ください)
1、 次工程から取りに来るまでの間、どこかに溜めておかなければならないので、最大30分X1.2位に相当する置き場を作ります。 2、 置き場を作る上で重要なことは先入れ先出しが守れる構造にすることです。したがって通い箱はどこからでも取れるので避け、最も好ましいのはコロコンと言えるでしょう。どうしてもやむをえない場合は岡持ち方式にして、上から順で先入先出を行います。
3、 30分に一回取りに来るのは次工程の作業者ではなく部品運搬の専門の担当者にすることが重要です。この分は人が増えるように感じますが、実際は取りに来る時間+αで実際の作業が進むので、むしろこの方法のほうが効率が上がるというのが現実です。
4、 一回の引き取り数は次工程に溢れない限りの量で構わず、その都度若干のばらつきがあるのが通常で、したがって30分の置き場でなく2割の余裕をもたせたわけです。(ばらつき率と言いますが通常は2割弱ですが心配でしたら5割でもあまり影響はないと言えます)
5、 気がつかれたかもしれませんが、後工程には前工程と同じだけの置き場が必要です。また、後工程にどれだけ“空”があるのかを知らせるためにかんばんが必要になります。紙製でも良いですが岡持ちを使うのであるならば、岡持ちを利用します。もちろん箱でも同様です。これを“駐車券”と呼びます。
この仕組みを利用すれば工程が離れて(この場合は最大片道15分の距離ですので1Km!)いてもフルワークが機能するため、自律神経は働くわけです。
また、この場合の工程間の仕掛かりは“在庫”とは呼ばず“バッファー”と呼び最大量の規定はありますが最小量は0となります。0になった時後工程は停止することになりますが、通常はバッファーがある程度少なくなると異常警報ということで前工程に応援が入るのが良いと思います。
製品を作ってナンボの現場ですので、ここは臨機応変に対応しましょう。