連載コラム

第171号「標準作業の作り方について」岩城生産システム研究所岩城 康智

 標準作業は作業安全上・品質のばらつきが最も少なくするのが常識ですが、実はそうすることにより最も無駄の少ない作り方が見つかるのです。
では、実際どのように作るかと言うと、現場のレイアウトが最初となり、続いて作業台のレイアウト、作業点の設定、ジグの開発、自働機のデザイン という順序ですが、実は経験のある方は気がつかれると思いますが、これが思い通りに行くことは滅多に無いものです。
逆に、当初のデザインに執着しすぎると作業の無駄が目立つようなラインが出来てしまいます。
私は設計上の能力は目標能力の70%で設計し、後は現場での作り込みで解決したところ、設備投資はもちろんのこと、作り直しが少なくなった経 験があります。実際のところ作業者は初めの3ヶ月間に30%くらいの作業向上はできるものです。
また、複数の作業者が作業をする場合において標準作業は、まず一人作業で作るのが基本で、あえてそれぞれの作業での標準作業は、かえっ て共同作業の妨げになる事、また、タクトが変更されると作業表を作り直す必要があったので、滅多に作らなかったものです。
このように書き進めていると一部の方々からは、標準作業への冒涜だと言われそうですが・・。実際のところ以前に指摘されたことがあるので、弁 明させていただくなら、“与えられた仕事をこなすだけではダメだ”ということを実感できるような職場にしないと、向上心も達成感も生まれないばか りか、そのような“管理される”環境においては個人の人間性も尊重されないので、現場のモラルが悪くなるのです。
以前、海外の工場を拝見した時に、作業者が棒立ちになっていたので彼に聞くと部品が流れてくるまで待っているとの事だったので、一歩前に出 て作業を始めたらどうか?と言うと歩くのは無駄と習ったので動けない!
笑い話でなく同じような事は今の日本でも現場を問わず間接部門でも起きていそうな話です。
人は目標さえ明確であるならば、自身の能力を向上させ果てしなく進化できます。また、当事者同士でうまくコミュニケーションすることで、部分効 率から全体効率へと会社全体を変えてゆく力となるのです。それを阻害するような標準作業であるならまずそこから変えて行きたいと思いません か。