連載コラム

第169号「トップのための現地現物」岩城生産システム研究所岩城 康智

 現地現物は製造業に限らず、企業活動をする上で重要なことであるのは周知の上と思います。しかしながら具体的にトップがどのように実行するかは、明確になっているでしょうか。
実際のところ“やらなくてはいけないのだが、忙しくてできない”というのが現実で、現場の本音としても“来てくれるのはありがたいのだが、正直仕事の邪魔になっている”ということになりなかなか定着しないのが実情です。
私自身の経験として、1日平均4時間は現場にいましたが、そのコツを紹介します。
1、 現場には一人で行く。 毎日続けることですので、その度に関係者を連れて行くと、管理者たちの仕事を増やすことになり、マイナス面が多い。
2、 現場では質問はするが指示はしない。 現場に入る目的は日々の変化(異常が起こっていないかを見るのであって、トップが指示をするようになると、現場の管理組織が乱れ、かえって現場の仕事を乱すことになるので、基本的に静かにぶらっと見て回るのが重要なことです。見て回る内容も安全・品質・スケジュールを中心に見るように心がけ、掃除等は積極的に自分でやるのが良いと思います。
3、 なるべく午後に行く。 午前中の現場は突発的な現象に対しての対応があるので、朝礼以外はなるべく午後の安定している時に見るように心がけ、作業者が元気に作業できているのかを確認します。
4、 現場の中だけではなく外周も歩いてみる。 現場を中からだけではなく外からもよく見て、異音・異臭が近隣に悪影響を与えていないかを確認します。また、会社全体が社員の目から見て清潔かつ正しく管理されていることで、作業者のモラルが高揚できているかを確認します。
5、 自分の仕事は午前中に終わらす。 基本的に自分の仕事は午前中に終わらせるのが必要です。つまり必要な指示は朝一番で簡潔に終わり、各部署は自律的に活動させるのが必要です。
このように心がけることで、現地現物というものは実行できるのです。
また、現場でトップがメモを取っていると見られる方は監督されているようで、指示をしている事と同様になるので、基本的には作業者の前ではメモは取らずに覚えられる範囲で、自分の机に戻ってからメモを取ります。
是非皆さんも試してみてください。