連載コラム

第167号「イコールオポチュニティ (2)」岩城生産システム研究所岩城 康智

 解答は、

1. 与えられた仕事に対して、身体の能力上不適切。すなわち心身安全上の理由より、より適切な仕事に変更したと説明し問題なし。
2. 選考中のテスト結果、各人の実地試験中の記録出席状況の資料により偏った選考でないことを文章にて提出できたので問題なし。
3. 雇用後定期的に人事部が面接を行っていたが、特に個人からの要望が記録されていない。本人の希望があれば、より難易度の高い仕事に着くことができるが、そのための実地訓練をまだ受けていない若しくは合格していないため、品質上、安全上の理由による、と説明できたので問題なし。
4. 会社で支給するのは問題ないが、量が少ないのでかなり割高になる。今のところ各人が持参するのが最も対象者に利点が多いと思われるが、要望が多いのであるなら、食事を支給する会社と打ち合わせをする機会を持つので、依頼側もこれに参加する事で了解。
5. 会社はいかなる宗教において中立であり、イスラム教にたいしてもこれを変えるつもりがない。従ってお祈りの時間については、通常の休憩時間枠の中で、時刻については現場の上司とそれぞれ調整。場所については安全上、衛生上(いつも清潔にしたいので)の見地から、いちおう総務に連絡の事。因みにクリスマス等、キリスト教の祭り事は、国の行事、習慣なので宗教の中立に抵触しない
6. 現場では安全上の理由により、会社で承認された安全具をつけること。すなわちターバンはヘルメットの上に着用させた。(嘘のような話ですが本当にしてました、実際のところ、かなり背が高くなり動きにくく、第一かっこ悪い。やがて作業者がターバン式のへルメットを見つけてきて、めでたく会社の安全チェックも合格、晴れて公認のターバンへルメットとなりました。)
7. 安全上の理由により、混乱を防ぐために場内は英語で統一している。従って各人が英語の場内表示を読めることは、最低必要条件でこれを満たさないものは、現場への入場を禁じる。もちろん、機械操作を行う作業者は、操作に必要な英語の理解力を条件とした。(英語圏の工場を例としていますので日本でしたら日本語でよろしいと思います)

なにやら解答が理屈っぽいですが、上記にあるのは、どれも実際のあった事です。下線の部分の言い回しが非常に重要です。特に“日本の習慣”という言葉は使えないことに注意ください。ここがイコールオポチュニティの特徴で、あくまでも中立の立場で、各事項のプラス点マイナス点を明確にした上で、各人の自主性を引き出すように務めているのがわかると思います。つまり、会社は準備をするけれど、それを行うのはあくまでも個人の自主性によるというのが重要な趣旨となります。
また、よく質問されるのが、社外トレーニングを誰が負担するのかという事ですが、イコールオポチュニティの考え方に基づき、私は安全上必要なことは100パーセント会社としました。
一方、新入社員研修を除き、自己啓発的なものの中で、直接業務に関わるものについては、時間の都合は会社が調整する代わり、コストは個人持ちとしました。(この辺りが一部の日本の会社は非常に甘いですね。)
 なぜ自分持ちにしたかというと、自分のキャリアを伸ばすための責任は本人にあるのが原則であり、それに対する等価は当然個人の負担と考えたからです。この点、多くの日本企業においては、今まで終身雇用制度が一般的であったため、この辺りの棲み分けが非常に曖昧と感じます。もし全額負担が無理ならば折半が良いのかもしれません。
 これらを管理するのは人事部になるのですが、ご覧のようにかなり積極的に活動しないといけないことがわかると思います。また、現場の実情に精通していることが必要となります。事実、私の会社では、一部の人事部の女の子を1ヶ月間現場で働いてもらったこともありました。現場とは言っても溶接現場ですから、スパッタの飛び交う中、若い女の子が防護具をつけ、真っ黒になって働いているのを心配になって見ていましたが、現場の作業者がよく面倒を見てくれたおかげか、無事に復帰したのちは、上記のようなトラブルに目覚ましい活躍をしてくれました。


陸上競技における一例。
身長が違う選手であっても同じ高さのハードルで競技する。
身長が低い選手は高い選手に比べより高くジャンプしなくてはいけない。
これは平等と言えるか否か?