連載コラム

第165号「今朝、仕事に出かけるとき、あなたの背中を押すのは何か」岩城生産システム研究所岩城 康智

 最近若者の知識は向上しているのだが、会社の中でうまく活動出来ないという話を聞きます。会社に限らず集団の中でうまく働ける事は各個人においては非常に大事なスキルと言えます。なぜなら、集団の中で各人は自分の必要とする能力に気がつき、即ち進化する事が出来ると考えます。これは人間に備わった自然の力であり、この力を使って、先人の知識は次の世代に伝わって行く、つまり言う所のOJTです。また、一般的にOJTは現場で行なう物と思われがちですが、実際は家を出てから帰り着くまでが対象です。私も仕事が終わった後上司につれられて、“御指導”頂いた物ですが、これも立派なOJTと言えます。
私は英国で長い事、仕事をしていたのですが、事務所スタッフの管理にはずいぶん気を使いました。例えば、大部屋方式を徹底して、社長の私自身自分の部屋は持たないのみならず、事務所の中には部署ごとの仕切りを廃止。また、机の上には衝立てのような遮蔽物を完全になくし、私物の放置を禁止。その上、3ヶ月に一度業務に支障のない限り席替えを実施したのです。
 保守的な英国の事ですので、普通では考えられない事ですが、人事部長/経理部長を中心に推進してもらい難なく実現したのです。おかげで間接部署の生産性は凄まじく向上し、通常の日では、2時くらいには業務が終了し、彼らは進んで現場の改善活動を手伝っていました。もちろん残業はゼロです。
 高度に進化したビジネスの中で、間接部門の重要性は高まるばかりです。それにもかかわらず、現場の改善に対して、間接部門の改善はそのやり方が一般的でないように感じます。私にとって間接部門の改善は現場と全く同様で、物と情報の流れを阻害する要因を徹底的に排除する目的のため、前記のような事を行なった訳で、英国の常識では考えられない事ですが、私にとってはもっとも自然な環境を作ったにすぎないのです。
 最近本指導会に間接部門の参加を呼びかけておりますが、これは前記のように、事務所だけにいるのが仕事ではないからです。人事・経理・開発担当には年齢を問わずぜひ進んで参加していただきたいし、同時に聞いているだけでなくどんどん質問して頂きたい物です、なぜならこれが本当の意味で間接部門のOJTであるからです。