連載コラム

第162号「辛抱」岩城生産システム研究所岩城 康智

 今期に入ってよく耳にするのが、景気が良いという話で、実際のところ株価も軒並み上がる傾向が出てきています。これはいわゆる円安の影響と言うことになっているのですが、よくよく考えてみるとそこにはもう一つの条件があることに気がつきます。それは日本国内で生産しているということが、重要な要素となっており、価格競争にさらられていた物の利益貢献度が大く現れているのも注目すべきです。一方価格は高くとも国内における加工度の低いものについてはさほどの影響はなく、むしろ輸入価格の高騰による収益悪化が心配されるのが実情であるようです。
 いずれにしても円安による一過性な利益も、輸入価格の高騰により一巡しそれ程の即効性はなくなるのですが、ここで注目されるのが今回のご利益にあったのが、円高にもかかわらず日々改革に励んだ結果であるということです。一方円高を理由に、改革を怠り海外に製造の大部分を依存して行く経営方針がいかに為替変動に対してリスクを伴うのかが明白となったのです。
 経営改革に必要なものは、辛抱するということとおもいます。どの様な苦境に立っても、現実を素直に受け止め、明確な中期計画を持った組織作り、目標に向かってトップの現地現物による率先改革を実現するためには、自らの結論を急ぐことではなく、会社組織を信頼してともに戦う覚悟であり、この苦しさを辛抱することが経営を変えるという覚悟と言えるのです。トヨタを始めこのような辛抱の出来た企業の多くが、この春大く利益を伸ばしているのは誇るべく事で、単に円高のせいだけにされては、合わないと思うのです。
 しかし、これを機に経営革新をより大きな活動として活動して行きましょう。