発行者 岩城生産システム研究所

 編集者 IPSインターナショナル
   平成24年12月15日発行 第159号
 ― 目 次 ― 

  
 連載コラム「量とコスト」 岩城生産システム研究所 岩城 康智



「量とコスト」


岩城生産システム研究所
代表取締役 岩城 康智

最新型の機械では改良点として速度を指摘する事が多い。それは、その方が安く作れるという理屈である。一方、売れない物まで作るのは間違えとの見方もあります。
 速度の速い機械は、投資額は大きくなるけれども、長い目で見れば、遅い機械に対して安くなるのが普通です。ただし、そこにはリスクが伴うのです。
1. 小さな注文がある場合段取り替えが発生する
2. トラブル時の影響が大きい
3. 装置が巨大となる場合、建屋の設計が特殊となり、コストアップとなる

 一方、遅い機械は、上記の問題点においては利点があります。特に量の変動においては柔軟に対応出来ることが特徴と言えます。ただし、リスクとしては、
1. 個々の機械は安いのだが、生産量に比べると割高
2. オペレーターの人数が増える

 通常のTPS流に言うならば、遅い機械となるのかもしれないのですが、ご覧のように一長一短といえるのです。
 ところが、現在のような将来に対して不透明な時に於いては、多少遅くとも初期投資を最小限にする事が理想と言えます。また、将来の拡張性を最大限可能にするように工場のレイアウトにも注意するならば、遅い機械のリスクを最小に出来るのです。要は時と場合によって使い分ける事が鍵となります。
 ここの、使い分けるためにはどうするのか?それは、両方を持つというのが理想論ですが、仮にリスクが大きい場合は、まず小さいラインを導入し、工場の敷地/サービスには余裕を持つ事で対応したいものです。
 聞く話では、古い機械では競争出来ないので、大型投資が必要などと言う方がいるようですが、潜んでいるリスクにはどのように対応するつもりか?量を作ると安くなるというのはバルク原料を作るならばともかく、加工業においてはビジネスモデルとして、あまりにも乱暴な机上の空論でしかないのです。現在のような複雑な時代に生きる企業として、より良い物をより安く作るためには、製造現場のプロも是非企画に参加していただきたいと思います。

 バックナンバー
■無断複製・転用・販売を禁止します■
Copyright©Iwaki Production Systems Research Ltd. 2005-