発行者 岩城生産システム研究所

 編集者 IPSインターナショナル
   平成23年12月15日発行 第152号
 ― 目 次 ― 

  
 連載コラム「半導体事業の再生(9)」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一



「半導体事業の再生(9)」

岩城生産システム研究所
代表取締役 岩城 宏一

半導体工場の無駄の数々 (搬送系-その3)

 設備の加工口に作業者が直接仕掛けるとして、改めて設備を見直してみると、実際の加工ユニット並みの立派な搬送ユニットが設置されているのに気づくであろう。前号で指摘したように、設備を縦持ちにした場合、これらは全くの無用の長物に過ぎないが、果たして横持ちの現状でも、どれほどの役に立っているのだろうか? 実際の生産現場じっくりと観察してみるとよい。
 半導体の場合、普通は一回に仕掛ける量は、ウエハーで10〜50枚程度である。そのため一回仕掛けておけば、次は平均的には30分程度後でよい。要は規則正しく定期的に仕掛ければ済むものを、それを嫌い、一度に出来るだけ沢山運び込み、その回数を減らして合理化したと思っている。唯それだけのことに多大な設備費を投じ、しかも設備を複雑にして維持管理を難しくしている。
 これは、液晶工場で実際に体験したことである。改善が進行するに従い、皆が搬送系が邪魔になることに気付き、搬送ユニットを殆ど取り外してしまった。その結果、縦二百数拾メーター近くある生産フロアーが“がらがらに”空いてしまった。普通の工場では当然設備を移動し、間締めするのであるが、この工場では建物と一体になっているものが多く、それが出来ない。そのため、仕方なく、点在する設備に電動バイクで走り品物を繋いだ。結果は当然仕掛は数分の一に減少し、設備のチョコ停等トラブルは減少した。
 ついでに、このような壮大な無駄の発端となった、“設備に品物を一度に沢山運んだ方が良いか、小分けにして運ぶ回数を増やした方が良いか”について説明しておきたいと思う。結論は言うまでもなく、世の常識とは全く逆に、一度に沢山運んだら大変なことになる。小分けにして規則正しく運ぶことが絶対有利である。このような判断は机上だけで物事を考えているかぎり難しい。実際の仕事の中にいてはじめて理解できることである。
 “一度に沢山運び”を選択する人達は、物を運ぶという手間だけしか念頭にない。しかし、“運ぶ”ということは“設備を使って生産する”ために行うのである。したがって、どちらが生産し易いかによってきまる。生産は云うまでもなく、前後工程が密接に関係している。これらの関係からみて、どちらが大切かを判断しなければならない。“小分けにして規則正しく運ぶ”は物を運ぶこと自体は手間がかかる。しかし、前後工程の関係を円滑に維持する上で重要な方策である。
 小分けして運ぶ頻度が増えることは、生産では実際問題として大きな負担になる。この問題はご存知の通り、一度に同じもの沢山運ばないで、いろいろなものを混載して運ぶことにより解決している。これなどは、実際の現場を良く観察し、そこから導きだされた現場の人達の智恵の成果であろう。
    以下次号


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