発行者 岩城生産システム研究所

 編集者 IPSインターナショナル
   平成23年11月15日発行 第150号
 ― 目 次 ― 

  
 連載コラム「半導体事業の再生(7)」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一



「半導体事業の再生(7)」

岩城生産システム研究所
代表取締役 岩城 宏一

半導体工場の無駄の数々 (搬送系-その1)

 前々回の設備の無駄についてコラムの中で、特に搬送系の無駄が多いことを指摘した。今回からはこの搬送系の無駄について見てみたいと思う。
 先ず目につくのは、工場の中を走り回る自動搬送機である。この搬送機はすべての工場に設置されているとは限らないが、いわゆる最新鋭といわれる工場には、たいがい設置されている。
 その目的は搬送の手間を省くことであるが、その他に人が持ち込むゴミを嫌い、さらには完全無人化工場を念頭に、その一環として取り入れられて場合もある。しかし、いずれにしても費用対効果の観点あらみると、とても採算が合う話ではない。恐らく、せっかく新しい工場を建設するのだから、既存のものとは何か違う目新しさを、そこに求めたとしか思えない。
 自動搬送機に関する必要な投資は直接の搬送車にとどまらない。自動的に積み降ろしをするための設備、それに隣接した品物の集積庫、走行軌道等一連の付帯設備費を含めると、億単位の金額は悠に超えてしまう。さらに問題は、これらの設備は何も役に立たないばかりか、仕事上大変邪魔になるということである。
 先ず“搬送の手間を省く”点であるが、確かに品物を運搬すること自体は搬送車が行っている。しかし、それを動かすために目に見えない多くの人手がかかっている。自動搬送車の走行で運搬する品物の量は、一人で手押し台車で運べば十分賄える程度のことである。それを、わざわざこのような複雑な装置を設置するなどは、実際の仕事を全く顧みない人たちの、机上でのままごとに過ぎない。
 またゴミの問題についても説得力がない。如何に優れたクリーンルーム内でも、長くそこの品物を滞留させておくと、当然それに相応してゴミは付着してくる。少なくともゴミのことを問題視するのならば、特定の領域内に人が持ち込むゴミを問題にする以前に、品物の停滞を無くし、投入から完成までのリードタイムを短くすることの方が余程理にかなっている。この装置は逆に無用な品物の停滞を増やす。これを手押し台車に置き換えることにより、生産のリードタイムは、20〜30%は確実に短縮できる。
 このような品物の搬送は、現在の半導体工場の工程が、同類の工程ごとにまとめられた横持ちになっていることに原因している、これまでの工程ごとの部分最適を、投入から出荷までの全体最適に、業界は発想を転換しなければならない事態に直面している。それは工場内の工程の配置を、横持ちから縦持ちに大転換することを意味している。
    以下次号


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