発行者 岩城生産システム研究所

 編集者 IPSインターナショナル
   平成23年 7月1日発行 第141号
 ― 目 次 ― 

  
 連載コラム「半導体事業の再生(1)」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一



「半導体事業の再生(1)」

岩城生産システム研究所
代表取締役 岩城 宏一

私は生産現場の再生の仕事を始めた頃から、半導体事業の再生に関わってきている。幾度かの挫折に遭遇しながらも、現在もその再生のための活動を、精力的に進めている。最近では、その願いは確実に現実のものとして、形を整えている。
 再生のための最も大きな障害は、技術的な問題ではなく、その業界の慣習、即ち常識や行動様式であることが判る。半導体が現在では、あらゆる分野で用いられ、その動向は世界の経済に及ぼす影響は甚大である。 今回をスタートにして、半導体業界の問題と対策について、整理してみたいと思う。
 ふり返ってみると、昭和30年代のはじめのトランジスターの時代から、早くも半世紀近くも時間が過ぎている。当初の商品は、ソニーのトランジスターラジオ程度にすぎなかったが、現在では半導体素子を内蔵しない製品を探すのが困難な程、あらゆる分野で用いられている。
 このように人々の生活に広く浸透していながら、その供給は極限られた、一握りの企業に依存して寡占状態にある。しかも、半導体素子の多くが、売価に対する材料比率は20%以下で、通常の工業製品では稀なほど高付加価値製品である。このように高付加価値製品であり、寡占状態にありながら適正な利益を確保できている企業は極めて稀である。そのほとんどが“会社の継続がやっと”と云った惨状である。
 客観的には高い収益をあげる条件は揃っていながら、そのチャンスを逸している。信じられないような事態の原因は一体何か? それはこの業界の常識は、我々には信じられない程の非常識なことであり、それが依然として業界に定着し、変えようとしないことである。
 この業界に関係する皆さんには、少々耳の痛い話であるが、その常識たる非常識を、次号より順次俎上に上げていきたいと思う。これは、その障害の撤廃を、積極的に現在改革を進めている皆さんにとっては、十分納得出来る話であり、また現在の考えと行動をすっきりと整理し、心置きなく改革に没頭することに役立つことと思う。

先ずここでその俎上に取り上げる予定の“常識たる非常識”を、以下に列挙しておきたいと思う。
1) 生産現場の仕事は請負者の仕事
2) 半導体は設備産業で投資がかさむ
3) コンピュータ制御の最新鋭工場
4) 纏めて沢山つくれば安くなる
5) 量産しないと安くならない
6) 半導体の工程は複雑
7) 半導体のリードタイムは長い(3ヶ月)
8) 高額、高性能検査機で高い品質保証
9) チップサイズを大きくすれば安くなる
10) これ等の非常識を変え、“平成の奇跡”を起こす

以上


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