発行者 岩城生産システム研究所

 編集者 IPSインターナショナル
   平成23年 4月1日発行 第135号
 ― 目 次 ― 

  
 連載コラム「二倍の効率改善 (2)」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一



「二倍の効率改善 (2)」

岩城生産システム研究所
代表取締役 岩城 宏一

前号から企業の生産2倍について書き始めたのであるが、東北地方の大震災により、当初の気持ちは跡かたもなく、今は完全に被災者の日々の報道に釘付け状態である。
 地震発生から大津波予報、実際の津波の襲来から引くまでの一部始終が、つぶさに映像として送られてくる。人間の意志などまったく意に介することなく、人々の生活を無情に押し流し、破壊しつくしてしまう自然の力の大きさ。
 その猛威の中で、一瞬の差で助かり、また命を失う多くの人々を目前にする。
 それは人の幸、不幸の問題を越えた、大きな自然の摂理の中の万象の一事として、極く当然の成行きとして目の前で展開されていく。
 命の危機を感じた時、人々はとっさに危機から身を守ることに走り、またそのために自らの危険をものともせず結束し黙々と協力し助け合う。そして危機が去るとき、安堵感と共に、寒さや空腹や疲労を感じる。それらは人により様々で、千差万別である。それにより結束は徐々にゆるみ始める。緊急の衣食住のニーズが満たされると、より美しいもの、おいしいもの、便利なものへとそのニーズは移る。それはさらに人々の結束を弱めていく。
 このような人の要望と結束の関係は、戦後50年の間に体験してきたことであるが、日々の避難先で同じことが起きており、その変化を手にとるようにみることが出来る。
 石原知事が、今度の震災は日本人に対する天罰だと、大変問題になりそうな発言をしていたが、個人のニーズの高まりに並行し、社会的な結束や連帯感が薄れる。現在の我が国における、個々の欲望の行き過ぎは、健全な社会の成立さえむしばむことへの警鐘であろう。
 今回の震災に対する日本人の対応は、世界の各国で驚異を持って報じられている。それらの報道を見るまでもなく、被災地の人々の整然とした対応や、これに対する全国からの支援等々に、我々の体内にあるDNAが強く人々を走らせている。これこそ終戦の廃墟の中から、お互いに協力し助け合って今日を築いてきた我々日本人のルーツであろう。
 今回の震災は、現在の我が国における多様化した価値観の中で、我々が生きていくための共通の目標を見失うことのないよう、理性と自制力の必要性をまざまざと見せつけている。


以上



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