発行者 岩城生産システム研究所

 編集者 IPSインターナショナル
   平成23年 2月1日発行 第131号
 ― 目 次 ― 

  
 連載コラム「頑張れNEC」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一



「頑張れNEC」

岩城生産システム研究所
代表取締役 岩城 宏一

1月28日の日経の社説に「今こそ選択と集中が求められるNEC」が掲載された。私自身大変お世話になった会社であり、また親しい友人達が沢山いるだけに、ことNECのことになると他人事ではなくなる。
 NECの工場群は、いずれも業界で群を抜く優れた生産工場でありながら、その強さが、経営にとって如何に重要であるかの認識が、社内に今ひとつ浸透していないことについて、かねがね不安を感じていた。
 携帯電話の本庄工場、鹿児島の出水の液晶工場、半導体の各工場いずれも業界の水準をはるかに越えた、優れた工場である。しかし、残念ながらその強さを活かし、事業を世界一に育てようとようとする、肝心な経営努力が相乗してきていない。自分の力でやり抜くことより、携帯電話や半導体のように安易に他社の力に依存する選択をしがちである。
 米沢のパソコン工場は、関係者の血のにじむような努力によって築きあげたものである。そこには優れたノウハウが沢山あり同業者には絶対開示すべきものではない。そのように苦労を積み重ねながら事業を育てていくのが経営であろう。それを簡単に中国のレノボと関係を結ぶようなNECの経営判断の軽さは、今日のNECに苦境をもたらした元凶であり、その生存の芽さえ摘むであろう。
 これまでもNECは「選択と集中」の名のもとに多くの事業を手放してきた。しかし、捨てた事業は沢山あるが、どの事業に集中してきているのか定かでない。言葉上だけではなく、NECで働く人々が総力上げて集中的に育成している事業とは一体何か。日経の新聞記者にさえ、そのことが見えないようで、ただ経営の逃げ口上に過ぎないと批判されても仕方がないであろう。
 私はNECには立派に会社を蘇生する力はあると思っている。しかしまず“このままではNECは間違いなく駄目になる”その現実を直視し、経営者、管理者がその危機を当事者として認識し、しっかりと危機感を共有化することが必要であろう。皆で一致して行動を起こせば、必ずこの危機を転ずることができる。それを心から願っている。

以上


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