先日,友人の紹介で、出版関係のコーデイネータに会った。彼の話によると、出版業界も、大変不景気で深刻な状況にあるそうだ。特にあれほどもてはやされたトヨタや、トヨタ生産方式関係の出版物は、現在ではまったく売れないそうである。
その原因は言うまでもなく、世界の市場で勝ち続けてきたトヨタが、昨今の一連の動向により、“トヨタ神話”が崩壊したことにある。即ちこれまでの「常勝トヨタ」イコール「トヨタ生産方式」の図式が、読者の関心から完全に消えてしまっている、ということである。
そのため、今さらトヨタ及びトヨタ生産方式に関して、新たに出版を企画する機運はないそうである。この話は、彼ばかりではなく、兼ねてからの知り合いの、その分野の関係者も同様の反応である。
この話を聞き、世の中に対して啓蒙的な役割が期待されている出版業界も、完全に“売れる”“売れない”の判断によって、物事が決められていることに、少々驚きを感じた。所謂、“商業主義”に対する奇遇は、オリンピックの世界では、良く話題になっていた。しかし、今や総ての分野で、この風潮が支配的になっているようだ。
“トヨタ神話”が崩壊しても、依然としてトヨタ生産方式は健在であり、有用である。特に昨今のように、進路を見失った日本の製造業の蘇生には、この方式及び、その方式に底流する経営思想は、必要不可欠なものであり、マスコミのみならず、社会的に一層強い関心を持たなければならない状況にある。
今回の“トヨタ神話”の崩壊とトヨタ生産方式との関係は、唯うわべの現象に走るのではなく、もっと掘り下げて事実を把握しなければならない。それは、トヨタやトヨタ生産方式を研究するためではなく、今我々が直面している、自らの危機を突破するための、具体的な行動指針を見出すために必要なことである。
円相場も80円は現実の問題になっている。今や我々は、75円でもやっていける企業体質を具体化しなければならない。このことは、“それは無理だ”、“出来ない”として、始めからあきらめられる問題ではなく、避けて通れない経営上の最も重要な課題である。
世の中では万策がつきたように思える中で、我々この課題の突破に向かって、全力をあげている。それは、トヨタ生産に底流する経営思想を移植し、人々の智恵と成長を武器に、全員の参加の経営体制を築くことてある。
以上
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