先月の末、カタールガスの要請でドーハを訪問した。今回の講演旅行の発端は、カタールガスの社長の、“欧米流の経営ばかりではなく、あの小さな国の日本がなぜあのように強いのか、日本のことを勉強したらどうか”ということにあった。
私にとっては、中東の国は初めてのことであり、いろいろな面で啓蒙されることが多い旅であった。往きは、シンセンに滞在していたため、香港経由でドーハに向かった。約数時間の飛行の結果、砂漠の中に造られた空港に下り立つ。予想通り暑い。予想外であったのは、黒い衣装の女性や白いコートとターバンをつけた男性の衣装が、まったく違和感がない。特にこの国の女性にとっては、あの黒い衣装が、女性をもっとも綺麗に引き立てるものであることがわかった。
講演の対象は、30人程度のカタールガスのマネージャー達で、日本からは私の他に、3名の生産関係の専門家が参加した。私の演題は、「製造業が国を支える」 ―資源は有限、人の智恵と成長は無限、それを生かして製造業の競争力を強化する― であった。その論旨を以下に掲載するので参考にして欲しい。
「講演論旨」
我が国は小資源国である。そのため、資源を有効に活用しそれを補うために、製造業を大切にしている。トヨタ生産方式は、そのような日本の戦後の焦土の中で生れ育ってきたもので、現在では日本の製造業の代表的な生産方式である。
この生産方式は、当時の日本の多くの経営者が持つ経営思想のもとで、経営者と現場の人達が一緒になって、実際の仕事の中で開発し育成したものである。そのため他に類を見ない独創的な多くの生産方法を包含し、一つのシステムとして具体化している。この方式に底流する経営思想と手法は、欧米を中心に発達した現在の一般的なものとは、全く異質なものである。したがって、トヨタ生産方式で機能している(日本流の)企業の経営マネジメントは、当然欧米流のものとは違うもので、日本ばかりではなく世界のマネジャーも注目すべき問題である。
欧米流のマネージメントは、マネージヤーまたは特定の人のアイデアを、他の人々に行わせることを目的に、自分以外の他の人を管理するためのものである。一方日本流は、会社の目的と目標を人々と共有し、その達成に向かって自主的な活動を展開する中での、マネージャ−が任務を完遂するために、自分自身を管理する。
そのためには、人々が誰からも指示されなくても「仕事が判る」こと。またそのことがすぐ「実行出来る」ように仕事の環境を整備しなければならない。その環境づくりのためには、行動の「目的と目標の共有」、活動の「継続」と「具体性」が重要になる。
以下次号に続く
|