発行者 岩城生産システム研究所

 編集者 IPSインターナショナル
   平成22年 6月 15日発行 第116号
 ― 目 次 ― 

  
 連載コラム「このままだと日本の製造業は危ない」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一



「このままだと日本の製造業は危ない」

滑竢髏カ産システム研究所
代表取締役 岩城 宏一

 最近気になることの一つに“このままだと、日本も早晩西欧諸国のように、活力を失い、国 全体が老齢化していく”ように思う。その根拠は、出会う多くの人達が、教養もあり聡明であり ながら、実体のある具体的な仕事を行っている人は、殆ど皆無に近い状態である。これほど 大勢の人達が、富の再生産から遊離してしまっていて、其の国の経済が成立するとは思わ ない。
 或る人の話では、米国やフランスなどの一流国は、広大な農地を持つ、いわゆる農業国で あるという。これは納得のできる話であるが、一方我が国は、農地ばかりではなく天然資源も 、自給さえ出来ない小資源国である。それで生きていくためには、限られた資源を有効に生 かす、製造業を盛んにするしか道はないはずである。
 製造業を盛んにするということは、難しい事ではなく汗を流して実際に働くと云うことである。 現在の日本の社会では、こんな単純なことが、皆の関心事から薄れてしまっている。逆にそ のような人は能がないからと軽じられる傾向さえあある。大手の企業の人々から頂く名刺に は、これでもかこれでもかと云うほど、立派な肩書がプリントされている。しかし、其の肩書に 相応する実際の仕事は、一体何だろうと疑問に思う。その正体さえ定かではない。
 ましてや、その業務について、どの様な目標を持ち、どのような取組みをしており、またその 達成見通しは如何? など問いかけても、まともな回答など聞いたことがない。目標も、曖昧ま た独りよがりで、達成状況などについては、出来ない理由を理路整然と並べるだけである。 出来ない理由を見つけて、それを解決するのが、仕事であることの基本的な認識さえしてい ない。
 昭和20年代の終戦時に比較し、技術や経営管理等の面において、現在の我が国は、随 分進歩したはずである。確かに技術面においては、IT分野を代表に多くの進歩の跡を確認で きる。しかし、経営管理面における進歩とは、その実体は一体何であったか? 確かにコンピ ューターの導入よって、いろいろと便利になってきているが、大きな流れとして目につくことは 、中央集中管理による、管理体制の強化でしかない。これは言うまでもなく、所謂欧米型の管 理への追従である。
 問題は果たして、この集中管理による管理体制の強化が、我が国おける“製造業を盛んに する”ことに寄与しているか否かである。これは明らかに“NO”である。実際の仕事の現場か ら遊離した、今日の形式的な経営管理は、むしろこの中央による、管理体制強化がもたらし た重要な所産である。度を超えた管理は、“仕事を知らない人が、仕事している人を支配する ”といった、とんでもないことがおきる。我が国の生産現場では、今やこのような現象が普通 のことになっている。
 「以下次号」



 バックナンバー
■無断複製・転用・販売を禁止します■
Copyright©Iwaki Production Systems Research Ltd. 2005-