発行者 岩城生産システム研究所

 編集者 IPSインターナショナル
   平成22年 4月 1日発行 第111号
 ― 目 次 ― 

  
 連載コラム「生産現場の再生の話(その3)」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一



「生産現場の再生の話 その3」

滑竢髏カ産システム研究所
代表取締役 岩城 宏一

現在の市場で、競合を優勢に展開するためには、現状を維持しながら、それを改善、改革していくことが重要な経営課題になり、その結果、新製品開発ばかりではなく総ての職場において、人々の創造的活動が大切になる。

 そのため、活動に参加する人々は、“働かされる”から“自ら働く”に変わり、さらに、担当業務については、熟練者としての自覚を持つようになる。それに伴い、企業の組織と運用も、“指示されなくても、今何しなければならないかが判る”“そのことが実行できる”“結果に対し的確なレスポンスがある”を満たすように変化しなければならない。その改善の要点は、下記を満たしていなければならない。

1) 皆が納得できるような魅力的かつ具体的な目標が設定されていること
2) その目標を実現するための基本方策が掘り起こされ、皆が共有し日常活動に定着していること
3) 一人一人の働きの結果がわかり、その結果がフィードバックされ活動が進歩しつづけていること
4) 成果や業務に応じて、教育、昇進、異動等が、納得的におこなわれていること

 上記の1)〜4)項は、形式的には多くの会社がすでに行なっている、会社方針又は経営計画の展開に関することである。しかし、その内容は大きく変わる。その主な相違点を下に記すと、

 展開の目的は、経営者及び部長級の統括の意志を徹底することにある。即ち、皆が担当業務を自主的に遂行するために必要な事項(改善、改革に関する)のみを簡潔に示し、改善業務の方向付けと推進することであり、部下の担当業務の内容に関して命令指示するものではない。

 従来は、目標値の達成度(結果)が経営管理の主題であったが、達成を必然化するための方策(プロセス)が管理の対象になる。このような経営方針を軸にして、仕事の現場で人々と対話をしながらPDCAをまわす。しかも、ここでは、改善業務のみが管理の対象で、維持業務は管理の対象にならない。そのために維持業務は、特別な管理をしなくても済むような、仕組みの構築が必要である。また、そこで働く人々は、その道のプロとしての自覚と、技能をもつことを前提にしている。

 現実は、いずれも程遠い状況にある。しかし、製造業の基幹業務である生産現場を、トヨタ生産方式に変えることは、これらの要件を殆ど満たし、そこから改革を始動させる。一応の形になるまでには、少なくとも数年の地道な努力と忍耐が必要である。このような改革を、一体誰がリーダシップとってやるのか?

 それは言うまでもなく、それは経営者の担当任務であり、他の誰でもないだろう。部屋より一歩も外に出ない経営者や管理者は、全く無用な長物にしか過ぎず、彼らからしばしば発信される、生産現場の国内からの安易な撤退などは、会社の死期を早める以外の何物でもない。
 以上




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