会社経営に対して大きな影響力をもつ経営者が、仕事の現場から遊離してしまっている。実際の仕事の現場に行って見ると、経営者の姿は何所にも見ることは出来ない。また実際の仕事の上でも、経営者の影響力などは殆ど感じられない。前号で述べたように、このことは現在の会社経営上、深刻な問題を誘発している。
現在企業における経営者の任務は、伝統的な人々に仕事を“させる”ことの管理から、仕事上でより創造的な成果出すための管理に変わってきている。それは、次のような社会情勢の変化による。
先ず第一は、人々の生活と労働環境は大きく変っている。特にこの一世紀の間の変化は顕著である。その間に人々は日々生れ、そして寿命をまっとうしている。人間の寿命は僅か90歳。ハイテク時代が始まった昭和20年代から、現在は早くも半世紀過ぎている。この50年は、人間社会が変化するには十分長い年月である。
当然働く人達の意識も変わり、かっての“明日食べるために”何が何でもそで働くと云う意識は、極めて淡白になっている。
第二は、製品に対する社会のニーズは、常に変化しながらも基本的には“よりよい物をより安価”を求めている。このニーズは、常に商品の機能特性と売価の更新をもたらし、特に現在企業は厳しい価格競争の渦中にある。それへの対応力の強弱は、企業の存続を直接左右する。
第三は、現在産業はハイテク技術の出現によって、業務は高度に専門化し複雑化している。しかも、これまでの社会的な経験や知識の蓄積のもとで、各自が独創性を競い合い、生存競争を展開している。 そのため、過去の経験や知識を合理的に管理し、それを活かしながら如何に新たなものを創造するかに、経営管理の重点が変わってきている。
このような環境下では、企業はより効率的で機動性のある経営活動が求められ、経営者の積極的なリーダシップが必要不可欠になっている。組織の効率と機動性は、個々人の能力と、経営者の目標に向かっての統括力によって決まる。会社組織で発揮される個々の能力は、まわりのニーズに応えることによって顕在化し成長する。人々を統括する任にある経営者や管理者は、その能力の顕在化の触発者であり、人々との直接の接触によって、初めて任務の遂行が可能になる。
さらに、現在の企業では、人々に創造的な成果が求められている。創造性は人々の自発的な経営参加によってはじめて可能である。人々は納得的な仕事には積極的に参画し“生き生きと働く”。納得しない事には動かず“言い訳ばかりして何もしない”。反対な事には抵抗勢力となり、“反旗を掲げる”。
このように“如何に人々に創造性を発揮させるか”即ち、常に皆が“生き生きして働いている”このような職場づくりは、現在の経営者にとっては、効率的で機動性のある組織造りのための重要な指針であり、直接の仕事の現場から離れては、とても実現できることはない。
これまでの、漠然とした経営者の行動とは明に異なり、これからの経営の意識と行動は、大きく転換しなければならない。また具体的な行動上でも大きな変化をもたらす。その実際行動については、当社のホームぺージに「経営思想の改革と実践」として連載中であるが、その内容は全業務にわたり長文であるため、要約を次号に掲載する。
(以下次号)
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