発行者 岩城生産システム研究所

 編集者 IPSインターナショナル
   平成21年12月15日発行 第104号
 ― 目 次 ― 

  
 連載コラム「疾走するボートは漕ぎ手と舵取りがいる」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一



 「疾走するボートは漕ぎ手と舵取りがいる」

滑竢髏カ産システム研究所
代表取締役 岩城 宏一

最近の指導会で、役員の方々に、“社長さん、何をしたら社長としての役目を果たしたことになりますか?”と云う質問を、意識的にしている。答えは決まって“えっ”と言葉に詰まってしまう。
 これは思いがけない質問ということもあるが、実は緩やかな湖に浮かび、その流れに身をまかして、自分の席に座っているボートの漕ぎ手や舵取りに似ている。
 今日のように、世の中の景気が悪くなると、皆な収益を落とし赤字になる。またそれを仕方ないとして容認し、誰も罪の意識を持たない。しかし、従業員の給与や賞与を減らし、酷い場合は会社は倒産し、多くの人々を路頭に迷わす。
 これを仕方がないとして、皆が問題意識も持たず、平気でいるとしたら、一体誰が、このような問題を事前に察知し、普段からそのリスクを回避するための任を負うことになるのだろうか。それは言うまでもなく、各々役割を分担し合い、そのボートの席に座っている人たちである。
 湖面は穏やかな日々ばかりではない。雨の日もあり、大あらしの日もある。ましてや、最近のように国際的な過当競争の中では、何時どんな事態が起こるかわからない。また今まで何とか無事に浮かぶことが出来た湖面も、温暖化等の地球環境の変化で、どんな危機が迫りくるかわからい。今回のような不景気は、比較的軽微なものである。
 このようなリスクの中で、生き続けていくためには、いろいろなリスクを想定して、日頃から備えしておかなければならい。その備えに向かって船を漕ぎだす時、舵取りや漕ぎ手が動きだし、お互いの連帯が始まる。
 会社で言うならば、当然好景気の時あり不景気の時もある。それに備えるために、盤石な会社づくりを目指して、皆で一致団結して前進していなければならい。
 会社計画は、その活動のために必要なもので、現在の年度ごとの予算制度の計画ではなく、盤石な会社づくり目指した長中期的な目標実現型の経営に転換する必要である。
 現在の予算管理の経営では、日頃の仕事の仕方を前提にして、可能な範囲のことしか行わない。そのため、行動や方策の改善改革は計画化の対象ではなく、数値だけが管理の対象になる。
 ところが、後者では、“出来る出来ない”ではなく、会社としてリスク回避に必要なことに取り組むため、当然現在の行動や方策は大幅な改善、改革の対象になる。そのため、計画は方策が主体になる。その中で漕ぎ手や舵取りの役割が必要不可欠になってくる。
 “社長さん、何をしたら社長としての役目を果たしたことになりますか?”の私の質問は、このような不景気に左右されない盤石な会社にするために、この会社を、どのようにしようとしているのですか?と、問いかけているのであり、その真意は、“現在の予算型の経営を目標実現型に変え、皆で前進を始めて下さい。そうしないと、皆の役割はっきりせず、働けませんよ”ということである。




(以上)


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