発行者 岩城生産システム研究所

 編集者 IPSインターナショナル
   平成21年12月1日発行 第103号
 ― 目 次 ― 

  
 連載コラム「経費節減の無駄について」 岩城生産システム研究所 岩城宏一



 「経費削減の無駄について」

滑竢髏カ産システム研究所
代表取締役 岩城 宏一


 今日のように不景気が続くと、日本中が無駄な経費の節減を始める。またそれによって、多くの経費の削減に成功していることも事実である。しかし、この節減活動そのものは、大変結構なことであるが、問題はなんでもかんでも、一律に削減率を定め、がむしゃらに実行を迫ってくることである。私の身近なところでは、関係者の出張費などが、先ずそのやり玉に挙げられえる。

 我々の身の回りには、いろいろな無駄がある。しかしこれらの無駄の中でも、本当の無駄は、当面の無駄な経費を発生させているだけではなく、会社の活動そのものを害し、経営の機動性を奪う等の、深刻な問題を誘発していることにある。

 この時期取り上げられる、経費の節減の無駄は、無駄と言うより、限られた予算の中での優先順位上、支払の先送りをする程度のものであろう。したがって、これらの無駄には軽微なものが多く、その総体的な節減効果も、当然限界がある。また無差別な一律的な節減は“この時期が過ぎるまでは、何もするな的になり、逆に会社の活動を足止めしてしまうことになりかねない。

 無駄として管理しなければならない問題は、その発生原因である行為であり、その結果の経費ではないはず。注意しなければならない点は、行為の結果(経費)のみを厳しく統制し、その誘因である無駄な行為の改善に及んでいないことである。

 無駄な行為にも大小いろいろなものがある。その最も大きいものは、会社組織の混乱によるものである。例えば会社が必要とする仕事を明快に示さず、またはそれを徹底しない、管理者や経営者の諸行動、さらには、目的のはっきりしない、人々のいろいろな動き等々。いわゆる会社としてのまとまりを無くした状態である。このような状態は、経営として機動性を損なう。それによって発生する無駄な経費は膨大である。

 社内の無駄な行為は、会社の体力を著しく消耗する。その具体的な一つの数値としては、損益分岐点比率をあげることができる。会社が正常に機能するためには、通常の売上金額の80%以下は、最小限必要な水準であろう。その比率を下げるための努力は当然必要であり、私の身近なところでは、50%程度の超優良な会社も少なくない。

 通常の半減程度の売上げの減少に耐えられない会社は、言うまでもなく、その備えを怠ってきた結果であり、当面の経費削減程度済む問題ではないだろう。皆がもう限界だと思っている効率化も、視点を変えてみると、まだまだそのスタート点にも至っていない例が多々ある。これを機に、無駄な行為の改善のための地道な活動に、もうそろそろ経費節減活動を乗り換へたいものである。その方向に活動の舵きり出来ないで、依然として従来の経費節減活動を、毎回毎回繰りかえしていること自体、その任ある人達の存在そのもが、最大の無駄であろう。



(以上)


 
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