しかし、日本のもつくりが弱く、そのことが経営活動を阻害していることも事実です。そこに生産無用論を生む余地を多分に残していると思います。しかし健全な経営を指向する限り、その強化は避けて通れない問題であります。
生産現場の弱体化の原因は、第一にはリードタイムが長く、殆ど外部委託生産と差が無いこと。第二は、人の働きが人件費対比で劣っている等であります。問題は、これらの改善の重要性を経営者が認識していず、自らこの問題に対峙することなく、安易な選択に走ることです。このような経営姿勢が、設問のような生産軽視の風潮を生み、それを受け入れる土壌を造っていると思います。
経営者自らが率先して取組めば、生産現場は強化することは出来ることです。例えば、先ず在庫に着目してみると、これは人々の動きがばらばらで、ベクトルが揃っていないことによって発生します。このような原因によって発生する在庫は、直接的な生産効率を阻害するばかりではなく、リードタイムを長くし、生産に関する組織の機動性を損なう。これは、生産現場のみならず、関連するすべての部署にいろいろな無駄な動作や管理を誘発し、会社全体組織の効率阻害の元凶であります。
ご存知のように、トヨタ生産方式の「平準化、ジャストインタイム、自働化」は、人々のベクトルを揃え、在庫削減のための最も効果的な改善策であります。
このことは、トヨタ生産方式は工程の無駄取りではなく、生産活動における組織そのもの大改革であり、それにより組織の悪さ、即ち皆の働きが“ちぐはぐになっている”ことによる無駄をなくすことであります。
生産現場が強くなることにより、生産活動が会社内における諸活動のハブとしての本来の機能を回復し「開発ー生産ー販売」の一連の動きが健全に機能することになります。 現在の経営者のなすべきことは、弱体化した生産現場を強化し、「開発ー生産ー販売」の会社機能を蘇生することです。しかし、残念ながら、多くの経営者が仕事の現場から遊離し、机上での学習レベルの経営しか遣っていないのが現実です。
経営戦略の現場からの遊離の問題は、経営に必要な情報を正確に採取できないことにあります。なぜならば、仕事の現場には非常に多くの重要な情報があります。しかし文書や言葉で表現可能な情報は、言語の構造上限られており、しかもその情報は、採取者の主観が多分に入りこんでいます。従って机上での経営は極く限られ、また偏った情報で物事を処理することになります。これらは、経営者が直接仕事の現場で自らの感性で感じ取る情報に比較すると、その質量ともにまったく異なったものになる。
また当然なことながら、現場離れの安易な経営の継続は、経営者の感性の鈍化に拍車をかける。私たちの現在の活動の重点は、生産現場の改善を先行させながら、会社組織全域に亘り“仕事の現場の重視とそこへの復帰”であります。それにより、皆が力一杯働ける、全員参加による経営活動を実現したいと思います。
(以上)
|