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発行者 岩城生産システム研究所 編集者 IPSインターナショナル |
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平成21年9月1日発行 第097号 | ||||
― 目 次 ― | ||||
◆ 「海外生産移行の発端」 岩城生産システム研究所 岩城宏一 |
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滑竢髏カ産システム研究所 代表取締役 岩城 宏一 |
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生産を海外に移す発端は、実際は人件の問題ではなく、別な問題がそのきっかけになっている場合が多いようである。それは現在の経営状況が深刻で、その打開に他に道がないため、せめて人件費の安価な国に生産を移す、というのが実情であろう。もし改善よって、数倍の生産性の向上を実現することを理解していれば、恐らく国内工場を閉鎖してまで、海外に移転するようなことは、かなり抑制されたと思う。 しかし、それでも海外に生産を移すべきだと、考を変えない人もいます。このような人達の共通の意識は、“改善でそこまで出来るのなら、海外でそのことやればもっと良くなるではないか”ということでしょう。確かにそのことも一理あるのですが、現実にはそうは簡単にいかない事情があります。 それは、前号までに述べましたように、海外への生産委託により、リードタイムが長くなり、経営の機動性が損なわれることや、輸送費等の関連費用の増加などで、国内の生産拠点を閉じて海外に移す選択肢は、経営上はありえないことです。しかし例え改善を企てとしても、改善そのものが日本国内のようには展開が出来ず、また定着しない難しさがあるためです。 当社は、もともとは海外転出による、国内製造業の空洞化を止めることに、その活動の動機がありました。しかし、最近は顧客の海外工場との連結決算上の問題で、中国、タイを中心に、海外工場の改善を手がけています。しかし実際活動をはじめてみると、国内に比較して、改善はそう簡単ではなく、相当の長い時間とパワーの投入が必要であることを痛感しています。 その第一の問題は、生産活動を支えている知識技能等の、社会的な基盤が、日本国内とはかなり事情が異なる点であります。「海外の工場は改善が進んでいないので、指導は容易である」と考えがちである。しかし、それは表面的な段階でのことで、本格的に生産体制を強化しようとすると、改善活動の展開やその継続、定着上非常に大きな困難さを感じる。改善への努力を緩めると、成り行きまかせのこれまでのやり方に、直ぐ逆戻りしてしまい、殆ど歯止めが効かない状態であります。そのため、経営収益改善の、単なる一時的な逃避策として海外に生産拠点を移すことは、かえって経営の苦境を助長することになります。 しかし別な事情から、現在では優れた海外拠点の構築の必要性が強くなっていることを感じています。それは、これらの国々は、もはや生産国ではなく消費国に変貌してきていることです。このような膨大な市場に関心を示さず、国内に留まりつづけることは、自らの生命を閉ざすことになりかねません。これからは、海外市場に本格的に進出することを企てなければならないでしょう。そのための重要な活動拠点として、先ず強固な生産拠点づくりは、避けて通れない課題だと思います。 要は、経営の建て直しの最良な方策は、結局皆で一致団結して汗を流して働くことであり、生産の海外移転などの小手先のことでは、傾きかけた経営は決して良くできないということでしょう。やはり、奇策を弄するのではなく、普通のことを、堅実にこつこつと積み重ねていくことが大切あると実感している。それが経営活動の基本であり、“継続は力なり”“改善は無限”という先人の言葉が、日々の改善活動に取組む我々に、改めて勇気と気力を与えてくれる。 (以下次号) |
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