発行者 岩城生産システム研究所

 編集者 IPSインターナショナル
   平成21年5月1日発行 第089号
 ― 目 次 ― 

  
 「インドのコインバトールへの旅A」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一



 「インドのコインバトールへの旅A」

滑竢髏カ産システム研究所
代表取締役 岩城 宏一


 私達は今日まで多くの改善に携わり、それなりの成果を挙げてきた。しかし、その成果を生かし、会社全体の体質の強化まで成功した事例は驚く程少ない。そのような状況を見るにつけ、経営のリーダシップが、この改善のためには、如何に大切あるかを痛感している。

 この会社にとっても、トヨタ生産方式導入による成果を、経営強化のために的確に導いていく、経営者のリーダシップが特に大切であるように思う。特にこの会社にとっては、改善で創出した人員は安易に削減するのではなく、会社の経営体質の強化に向けて、如何にその人材を生かすかに重点を置くことが大切な指向であろう。

 現在の人件費は、欧米諸国や日本に比較し、十分の一程度であるため、人員の削減は、僅かな人件費の節減にしかならない。しかし、トヨタ生産方式導入後の人が生み出す稼ぎは、現在の10倍ないしそれ以上である。即ち“わずかな人件費で、10倍以上の成果をあげる”このことは、欧米や日本等の先進諸国に対して、明らかな競争力の源泉であろう。

 余剰人員は削減するか、売り上げの拡大を求めそれに充当するのが普通である。しかしこの工場では設備等の保全、外部からの購入部品等の内製化等に多くの活用の場がある。これらの分野の自社内への取り込みは、社外への経費の流出を抑制するばかりではなく、会社の体質強化に直接結びつく。
即ち、設備保全の充実は、品質、生産性の向上に必要不可欠であり、部品
の取り入れは生産のリード手番の短縮をもたらし、将来に向かって着実に経営基盤を強化していく。

 人件費が安いことは、“その国の人々の生活水準が低く、貧しいから”とかたづけられない。多くの経費なくしては生活が出来ない我々より、僅かな経費で生きていける彼らの方が、遥かに強靭な生命力をもっていると言えよう。会社組織に潜在するこの生命力は、会社を発展のための重要な推進力である。しかし、それが開花して組織が成長するためには、それ相応の“時期”があるように思う。彼らにとっては今がその時期であり、ここ数年がこの会社の未来の大勢を決める大切な時期であろう。全員が一致団結して、この三分の可能性を見事成就してもらいたものである。


以上

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