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発行者 岩城生産システム研究所 編集者 IPSインターナショナル |
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平成20年12月15日発行 第080号 | ||||
― 目 次 ― | ||||
◆ 「DRAM文化からの脱却 (1)」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一 |
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滑竢髏カ産システム研究所 岩城 宏一 | ||||
1、はじめに 私が半導工場の改善に関係するようになってから、早くも8年近くの年月が経過している。その当時から、いわゆる“シリコンサイクル”の名のもとに、好不況を繰り返えす、不安定な経営が続いている。現在では各社とも著しく体力を消耗してきている。 この苦境からの脱出のため、いろいろな施策が試みられており、その象徴的なものとして、“DRAM文化からの脱却”が叫ばれてきている。しかし、十年以上が経過している現在でも、業界は浮上することなく、恒常的に低迷は続いている。今やその惨状は深刻で、事業の継続可能の限界さえ越えつつあるように思う。私は実際の経営の現場の中で、そのような現状をつぶさに見てきた。その原因の根源は、業界で叫ばれてきた、この「DRAM文化」から、依然脱し切れない業界の体質にあるように思う。 確かに、幾つかの企業はDRAM分野を切り離し、LSI関係の製品群に絞り込んできている。それによって、DRAMを主事業とする企業とに、業界は二つに色分けされている。しかし、そのことをもって“DRAM文化から脱却”したと言えるであろうか? 業界の現状は、それが明らかに“否”であることを示している。 “DRAM文化からの脱却”と言いながら、両分野を分離する他に、何を具体的に変えることが出来たのだろうか? 今日までの経営の推移を見る限り、その変化を明確に見ることはできない。各々の実際の仕事の仕方は、何ら変わることなく、事業を二分化した後も、DRAM専業企業はもちろんのこと、そこから決別したはずのLSI分野においても、この体質は変わることなく、旧態依然と続いている。 “そもそも「DRAM文化」とは何か? 今日まで、多量生産多量販売を前提に設備投資競争に明け暮れし、実際の仕事の現場から遊離した、この業界のあり方こそ、「DRAM文化」の根源であり、現在の総ての問題がそこかに根ざしているように思う。 市場の成長に伴い、用途の多様化が進展した現状を見るとき、これまでの業界の指向は当然反省され、方向転換しなければならない。しかし、その機運すら見えない業界の現状は、この問題の真相を把握しかねているよう思える。 衆知のように、半導体出現の初期は、用途はコンピュターを中心に限られ、市場は小さく、また供給力そのものも小規模であった。しかし、半導体の用途開発に伴い、市場は急激に拡大して造ればいくらでも売れた、いわゆる売り手市場の状況が続いた。このような市場状況の中で、多量生産多量販売を前提とした、大型投資による設備依存の企業構造が、この業界の典型的なものとして、今日に到っている。 今ではこのことが高じて、“半導体は設備でないと造れない” “その設備のため膨大な投資が必要”ということが、誰も疑うことのない業界の常識になっている。また膨大な設備の償却が優先し、市場の実需要に関係なく、工場は常に24時間365日の稼動を指向している。 しかし、このような業界の現状は、多分に机上の構想の上に築かれたので、現地で見る実際の状況は、これらとは相当違うものである。 (以下次号) |
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