発行者 岩城生産システム研究所

編集者 IPSインターナショナル
   平成20年12月1日発行 第079号
 ― 目 次 ― 


   「投稿コラム」 上海富士施楽有限公司 生産革新室 様

  
 「自己管理を前提にした経営改革(10)」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一



 投稿コラム
上海富士施楽有限公司(Fuji Xerox of Shanghai Ltd) 生産革新室 様




会社紹介
中国上海市の西南に位置し、従業員2,000人弱で、プリンター・複写機等の生産工場。

TPS活動について
当社は、06年後半より、製造現場を対象に自力展開でTPSを開始、08年度4月より、岩城先生のご指導の基「流れをつくる」本格的な活動を開始しました。

改善テーマ
IITImageInputterminalLineの生産性向上




本テーマの特徴
女性がリーダーとなり、生産現場とスタッフが一体となった改善活動

1.主要実施項目
(1)同期生産の実現(SUB&MAIN)
  →SUBInline化(SUB 4工程分全て)

(2)工程間短縮・ハンドリングロスの改善
  →部品供給量の少量化
    <10ヶ単位→5ヶ単位>
(3)ラインバランスロスの改善
  →リレー生産の導入
(4)治具の手待ち時間の活用
  →他工程作業を移動

2.改善効果
(1)生産台数UP10
(2)作業者低減:5
(3)Space低減:40

3.工夫した点
(1)Inline化のための作業台
  → 作業台(Inline化)の2段構造
(2)部品供給通箱
  → 部品に合った通箱製作。
(3)ハンドリング
 → 前取棚と棚内部品の置き方






4.最後に:生産リーダー(女性)の苦労話
・女性は、男性より弱い所はほとんどないと思います。
・改善活動は考え方に基き実施すれば、成功できると信じて実施しました。 ただ、改善は初めてのこともあり、どこから手をつければよいか、よくわかりませんでした。
現状の生産方式がどうして悪いのか?・・と言う疑問もありました。改善をすれば、リストラされる、仕事量が増加する等の悩みもありました。
そんな中で、管理者からのサポートをもらい、全員一丸となり実施しました。
また、メンバーの中では、FXでの先進企業・TOYOTA等の工場を見学し、刺激を受けたこともあります。
改善に、一番大事な事は、責任を持つということで、今後もこれらを大事にして改善活動を実施して行きたいと考えています。

以上




 「自己管理を前提にした経営改革(10)」
岩城生産システム研究所 岩城 宏一



もともと各社がトヨタ生産方式に着目した動機は、世界の市場におけるトヨタの快進撃に触発され、行き止まりつつある自らの経営の打開策の一つとして、トヨタのシンボルである、トヨタ生産方式に求めたに過ぎない経緯がある。

 しかし、大切なことは、すでに述べたように、「トヨタ生産方式があってトヨタがある」のではないのである。トヨタの経営があってその具現化の手段として、トヨタ生産方式が存在する、ということである。トヨタの経営はトヨタ生産方式を生み、現在なおかつその進化を求め続けている。また生産現場は、経営上の必要性を受け止め、日々自らの改善、改革を推進している。即ち経営のリーダシップが、常に生産現場の自己改革をリードしているのである。

 では強い生産現場を誘導するトヨタ経営のリーダシップとは何であったか?
「織機に代わり、わが国に自動車産業を興す」。そのために生産量では圧倒的に劣勢な我が国において、「米国に負けない日本固有の生産方式をつくる」であった。このよう遠大な目標に向かって、会社全体の熱いエネルギーを誘導する経営のリーダシップこそ、目標実現型の経営の真髄であり、また必須条件である。

 経営のリーダシップの消滅に伴い、組織内の人々のエネルギーは捌け口を失い、結局は失望の内に消滅へ向かう。現在社会においてはこのような例は沢山あり、健全な経営は極稀にしか見ることが出来ない惨状である。ご本山のトヨタにおいてさえも、今やその傾向は例外ではないように思う。

 当社が関係した各企業は、トヨタグループの工場群に匹敵する、世界中でもどこにも負けない水準まで、工場の体質を強化している。しかし、そのことが企業の経営の絶対的な安定化に結びついていない現実に直面している。

 昨今のように経済状況が悪化するに伴い、急速に収益が悪化し、その弱さを露呈している。そればかりではなく、改善の手を緩めると、生産現場も以前の状態にどんどん後退していく。

 このような現象の原因は何か? それは言うまでもなく、現状を仕方ないものとして是認するのではなくそれを改め、会社の健全な発展に必要な課題にむかって、全勢力を誘導する経営のリーダシップの、欠如以外の何物でもない。

 組織が改められ、仕事の流れの中で働いている人々にとっては、その任務を完遂するためには、もはや従来のような仕事の指示や監督は必要としていないのである。そればかりではなく、上司の的外れな指示や言動は、人々が働くことの重大な阻害要因でさえある。

 先ずその問題解決のための第一の着手は、現状肯定を前提にした予算管理型の経営を改め、現状改革を前提にした目標実現型の経営に変え、人々が自己管理できる経営環境を整えることである。それは、人々の持つ能力の可能性に絶対の信頼を置き、それに会社の未来を託し、人々の能力を余すことなく発揮できる、具体的な経営組織と運用の再構築に向かうことになる。

(以上)





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