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発行者 岩城生産システム研究所 編集者 IPSインターナショナル |
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平成20年11月15日発行 第078号 | ||||
― 目 次 ― | ||||
◆ 「共に挑戦、共に成長」 FDK 小出 昌子 様 ◆ 「自己管理を前提にした経営改革(9)」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一 |
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FDKエナジー株式会社 第1製造部第2製造課 小出 昌子 様 | ||||
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<職場の紹介> 私たちが生産している富士通アルカリ乾電池 には、多くのデザイン、包装形態があります。例 えば、2個、3個、4個、6個、8個、10個、12個、 14個、20個、30個、40個パック・・・と入り数も いろいろです。 私は、その包装梱包工程を担当しており、ライン数は自動機ラインが8ライン、手作業ラインは19ラインあります。品種は600品種以上あり、多品種少量の手作業ラインでは、そのほとんどが女性で構成されています。 |
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<トヨタ生産方式との出会い> 「1個でも多く作りたい」と思いながら、日々作業をしていたところ、「Aさんと2人で、ここにあるラインを効率化して、ライン長も短くして隣の建屋に入れることができるよう改善してください。」と突然の上司からの指示。 改善なんて踏み入れたことの無い未知の世界で、知識もなく、専門的なことも全くわかりませんでしたが、生産革新をリードして下さるスタッフと治具設計者の支援をいただきながら新しいライン構築をスタートさせました。 <改善実行> それまでのラインは、長いコンベアーに人を並べて、4人がシール貼り、フィルム入れ等の前工程を担当し、1人が箱詰めをする後工程を担当していました。 まずはラインを一直線にし、更に大幅に短くして、応受援のできるラインにしてみようということになりました。私の職場の手作業は工程数が少なく、サイクルタイムも短いため、応受援をするための工程設計に苦労しました。 改善知識の無い私は、幼児向けテレビの『ピタゴラスイッチ』という番組を見て「これ改善につかえるんじゃない?」とか、子供用のおもちゃを見ては、「この“仕掛け”すごーい。いいヒントだな。」と子供以上に遊んでみたり、何度も新しい作業方法をイメージしました。寝ても覚めても、改善が私の脳裏を支配するようになりました。 ラインの完成が近づくにつれて、みんなに受け入れてもらえるのか?本当に応受援が上手くいくのか?生産性向上につながるのか?とても不安でした。 ラインが完成して、ラインのメンバーに応受援の仕方を教え、新しいラインでの作業を開始しました。 今までと違う作業方法に、メンバーが戸惑うことや、やり難い所に不満が出てきたりして悩むこともありました。 しかし、メンバーとの意見交換をもとに更なる改善を繰り返すうちに、「どうしたら早くできる?」「上手く出来ないから教えて」という前向きな意見に代わりました。やがて、治具のメンテナンスも自分たちでできるようになりました。メンバー全員が前向きで協力的だったため、「私も頑張らないと」と励まされ助け合えた事がとても嬉しかったです。 結局、メンバーのモチベーションが高く、ラインの横でガチャガチャ改善をしていた事がよかったのか、新しいライン、応受援というやり方を受け入れてもらい改善が実現しました。 ラインのメンバーやご協力頂いた方々のおかげで、生産性は当初の5倍となりました。部材も見込み一括納入からかんばんでの納入形式に変えたことや、部材の流れ棚化等により物量を1/5にまで削減することが出来ました。 |
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<これからの課題> 岩城先生から指導を受けている“応受援”。 作業を固定せず、助け合う事で遅れを補うことができること、一人ひとりがスキルアップし多能工にもつながるという内容にとても魅力を感じます。 他のラインにも水平展開している最中ですが、ラインのメンバーにも、私がそうだったように、作業以外に改善が出来る様になったら、更なる向上心が生まれて、個々の成長につながることと思います。 ラインが完成したら改善終了ではなく、完成したらまた次の改善へのスタートです。 《終わりなき改善》…これからも、仲間と共に挑戦し続けたいと思います。 |
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以上 |
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岩城生産システム研究所 岩城 宏一 | ||||
このことを経営活動一般に拡大すると、会社全業務を維持業務と改善業務の二つに分類し、前者は標準化し、定例的な作業として実施する。後者は、多くの会社で行っているような、経営方針または経営計画の中に取り込み、改善、変更事項として個別に管理する。以上のように、全業務を二つに層別して、会社のすべての仕事を遂行することになる。 また改善のための個別の方策は、担当者の自主的な管理に委ねられるため、会社の経営計画でとりあげる方針方策は、各担当者の共通の行動指針となるべき、いわゆる骨太なものを取り上げる。その結果、それらは必然的に継続的で、日常的には変わらないため、仕事は随分わかりやすく、行動が定着する。 また、仕事は大勢の人々が協力して行われるため、担当した仕事を“実行できる経営”にあらためるには、陸上のリレー競技のバトンタッチのように、お互いの連携を良くすることが必須条件である。そのためには、前述の“判りやすい経営”のための業務の二分類化と、さらにその分担をプロジェクト的な縦持ち的な組織に変えること必要になる。これらは、いずれにしても、全社を対象とした大掛かりな改善事項になる。 このように仕事の進め方を改めることにより、人々の行動や成果が日常的に、はっきりと誰にも判るようになる。その結果、人々の働きに対する評価は、従来の特定の上司によるものから、一緒に働いている仲間達との間の相互評価に、その比重が移る。それによって、組織上の大きな課題である、的確に人々の働き、即ち“成果が反映される経営”が実現できる。 現在の予算管理型の経営を、本稿で提唱している中期経営計画を基軸にした目標実現型経営に変えることは、このような職場環境をつくるための第一歩である。 このような改革は、大きな労力と忍耐を必要にする。しかし、今や避けて通れない問題であろう。生産現場のトヨタ生産方式への移行は、その企業に大きな変化と成果をもたらす。その変化と成果が、大きな組織を変革するための重要な推進力となる。生産現場をトヨタ生産方式へ変えるのを絶好の機会にして、全社に改善の機運を助長しながら、全社にわたるこの経営改革を、積極的に展開するとよい。 この経営改革は、トヨタ生産方式がその会社に根付くための、重要な条件でもある。そのことは、トヨタ生産方式があってトヨタの経営があるのではなくトヨタの経営があって、その具体的な活動の手段として、トヨタ生産方式が存在するためである。生産現場は経営活動と一体であって、両者は別々には存在することは出ないのである。 トヨタ生産方式を導入していると言いながら、実情は生産現場の改善、即ち無駄取りや在庫削減等ののみに終始し、生産方式の変革に及んでいないことが大多数である。その原因として、トヨタ生産方式の理解が、その手法レベルに止まっていることを指摘してきた。しかし、より本質的な問題は、その改革が生産現場の改善に留まり、経営改革の一環として位置づけされていないことにある。私が関係している電気業界及びその周辺の企業においても例外ではなく、その傾向が顕著に認められる。 (以下次号) |
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