![]() |
発行者 岩城生産システム研究所 編集者 IPSインターナショナル |
|||
平成20年11月1日発行 第077号 | ||||
― 目 次 ― | ||||
◆ 「トヨタ生産方式って何??・・・から、4年が経って」 FDK 梶永 美佳 様 ◆ 「自己管理を前提にした経営改革(8)」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一 |
||||
|
||||
![]() |
![]() |
|||
FDK株式会社山陽工場 梶永 美佳 様 | ||||
私は、FDK且R陽工場で圧電ブザーの組立工程を担当しています。 当工場では、2004年10月より「トヨタ生産方式による生産革新」の取り組みを始めましたが、当時、他の職場に所属していた私には、「何のことやら?」とまるでひとごと。指導会の前になると上司がバタバタと走り回るのを横目に、「またいつもの続かないやつね。」と思っておりました。 ところが、2004年11月に圧電ブザーへ転籍となり、それまで外注工場で生産していた圧電ブザーの組立を社内で行うこととなりました。私たちが外注工場へ実習に行っている間、設備担当者が社内で「岩城先生流工程設計」で生産ラインの建付をしていました。実習先では椅子に座っての作業だったのに、社内に戻ってみれば立ち作業。しかも1つの作業に集中するのではなく、10数秒で製品を持って移動する・・・・。どうして? |
||||
|
||||
今まで経験してきた“製品がコンベアに載ってやってくる!”ではなく、私たちが製品をもって動く。なぜなの??たくさんの疑問や不満を設計担当者にぶつけたのは、言うまでもありません。とはいえ、設計担当者も「トヨタ生産方式」の勉強中!現場から出される意見に「とにかくやってみたらわかるから」の繰り返しでした。当時は工場内の面々も勉強中で、「トヨタ生産方式って何なの?」という私の疑問に満足する答えを出してくれる人はおらず、消化不良の日々でした。 |
||||
<とりやえずやってみよう!> 「まぁ、だまされたと思って・・・」というわけではありませんが、「とりあえずやってみて、やったら答えがでるから」と誰からも言われ、「じゃ、やってみるけどどうやるの??」に正確な答えは返ってこず、手探り状態での日々が続きました。 立ち上げ当初は1機種のみの生産でしたが、目標は大きく「外注工場の3倍の生産性達成!」を掲げて、長板ラインで1ライン4名での作業を行っていました。製品は2個流し、1日の生産目標は千個でした。しかし、生産方法は従来のままであったため、トヨタ生産方式のラインで生産するには不便なところが多々出てきました。 工程途中での接着剤の硬化時間や流れ作業をするには無駄の多い設備など、不便や不満にぶつかる度に「カイゼン」を行い、 4ヶ月後にはなんと目標を達成することができたのです。 |
![]() 生産ライン(改善前) |
|||
<目からうろこ> こうなってくるとちょっと面白くなってきました。 生産機種も増やし、機種変更に対応するため、作業台もユニット化しました。また圧電ブザー部門全体を見渡し、素材工程からの一貫ラインの構築を目指して、職場自体も前工程と同じ建屋へ移転しました。とはいえ、指導会の中ではどんどん新しい課題が出され次の指導会までにどうやってクリアするのかという壁にぶつかり、また、生産性も外注工場の約3.5倍まではいったものの横ばいの状態で進展が見えず、頭の痛い日々でした。 2007年4月19日の岩城先生の指導会で、「良いラインだけど、もっと良くするために、1個流しにしてみたら」とのご提案を頂きました。「え〜っ!1個流し?」、今まで「2個流し」にこだわってきたのになぜ1個??「岩城先生流工程設計」の中で1作業点当たりの作業時間から計算しても「2個流し」だったはず!? それでも「ちょっとやってみて」ということで、先生の前での初めての1個流しを実施。ライン従事者もアタフタしながら、いつも通りでよいのかどうかドキドキしながら作業しました。ライン内に取り込んだ“ながら設備”の前で待っていると「そこに標準手持ちを1個持って次の工程の作業をして」とのご指導。「そうしたら1人ラインからはずれて」との一声。「えっ、今度は2人で作業するの?!そうすると生産数量が落ちてしまう」と思っていると、「3人でやっていた数量が2人で出来ればいいでしょ」との事。「できるの??」だれもが考えてもみなかった展開でした。 みんな“目からうろこ”で岩城先生の指導会以降、今まで「当たり前」と思っていた事が「当たり前」ではなく、どんな発想でもいいんだという「カイゼン」意欲がわいてきたのは言うまでもありません。 |
||||
<社内自主研開催・・・更に改善に拍車> その2カ月後、私たちのラインをモデルラインとして、全社の各部門(生産部門だけでなく、営業、購買、生管、生技、品証等)の代表の人と私たちとで初めての「自主研」が開催されました。 「更に、生産性を1.5倍にしよう」という岩城先生の宿題を達成するために、現在のラインをどのようにカイゼンするか。2泊3日の日程で組まれた自主研は、寝る時間を惜しんでの意見の出し合いとカイゼン作業になりました。「自主研」明けの月曜日、ライン従事者が出社してきてビックリ!なんとライン長は2/3になり、今まで考えていなかった方法や改善が沢山盛り込まれています。 自主研後は更にカイゼンに拍車がかかりました。 |
![]() 社内自主研 参加メンバーと職場メンバーで知恵を出し合って集中的に改善 |
|||
ライン従事者自らがラインを短くし、自分達の意見やアイデアをどんどん形にしていったのです。現在では、ライン長は立ち上げ当初の約半分。生産数は岩城先生の指導会時の1.5倍を達成しています。(社内取込時と比較すると、5倍を超えるものとなりました。) <答え?> 「トヨタ生産方式って何?」の答えを周りのみんなと議論すると「やって初めて答えがでるもの」「個別の手段ではなく、その現場現場に合わせて自分達で考え、改善していくもの」と話がまとまります。それも全員参加で改善を繰り返していく。繰り返せば繰り返す程に結果が出て成果がついてくる。これが岩城先生のご指導をいただき、4年間体験してきた私たちの答えでした。 答えが正解かどうかは、わかりません。ただこれからも全員参加の改善を繰り返し、先生方のご指導をいただきながら前に進んでいきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 (以上) |
||||
|
||||
![]() |
![]() |
|||
岩城生産システム研究所 岩城 宏一 | ||||
人々の欲望は、かっては生きていくために必要な衣食住から、より便利な、より快適な衣食住へと大きく変って来ている。このような消費社会に適合するために、企業活動は、単純な可視的な作業を中心とした活動から、多様化と専門化が進む業務の中で、工夫改善、研究開発などの創造的な活動へと移行してきている。 人々に求められる労働の内容が、指示された仕事を守る単純な作業から、創意工夫を前提とした創造的な活動へ移行するに伴い、必然的に仕事そのものを多様化し複雑化する。そのため、業務は従来のように、一部の経営者や管理者で、管理できる範囲を遥かに越へてしまい、彼らの一元的な管理によって、全体を効率的に運用することは、今や不可能になっている。 このような状況を打破するために、現在の組織と運用の仕方を根本的に改め、新たな組織の構築が必要である。その改革にあたり、先ず配慮しなければならない点は、人々が創造的な能力を最も発揮するための条件は、「“誰にも拘束されことなく完全に自由である”」ことであり、そのような環境を職場にもつくることであろう。 このことは、働く側にとってみると“仕事をさせられる”から、“自ら仕事する”に変り、“自分の仕事は自分の意思で行う”ことである。 この改革が、日々の自分の仕事に生き甲斐を感じて働くための、第一歩である。このような、人間的な欲求に応える職場環境の中では、人々は積極的に困難にチャレンジし、限りなく成長し大きな成果を挙げる。 会社組織の中において、“自分の仕事は自分の意思で行う”などは、現実には不可能であると考えがちである。しかし現実の日常生活では、我々はいろいろな制約の中にあり、自分の思おうままに生きているわけではない。そればかりか、制約を積極的に必要なものとして容認さえしている。 我々は独りぼっちでは生きていけない。多くの人々との交わりの中で生きている。制約は交わりを維持するための重要なルールである。仕事上においても例外ではなく、要はそれらの制約を必要なものとして、事前に納得し受け入れているか否である。即ち“自分の仕事は自分の意思で行う”ということは、納得づくめで仕事をするということである。 多くの人々は、多少なりとも納得しながら仕事をしているだろう。しかし、皆が本当に納得していることが重要であるが、そのための努力は、実際はなおざりにされている場合が多い。 その主な原因は“忙しくって、お互いに納得しあうまで話し合う時間がない”というのが、その任ある役員や管理者、担当者の言い分であろう。 しかし、視点を変え“いちいち説明しなくても、お互いに何をしなければならないかがわかるような、わかりやすい経営方法はないのか?” また“判ったことが指示しなくても、実行できるような経営方法はないのか。”さらに“その成果が公平に評価に還元できる方法はないかと”考えて見ることが必要ではないだろうか。実は、トヨタ生産方式の中の仕組みが、これらの疑問に対する重要な解答になっている。 トヨタ生産方式での生産現場では、管理監督者も作業者も、誰からも仕事の指示も監視もされていない。しかし皆が力いっぱい働いている。ただ単に当面のデリバリーばかりでなく、日々の改善まで自発的に行い、着実に成果をあげている。 その仕組みの要点は、通常の仕事の仕方は標準作業として標準化され、生産情報の伝達は、かんばんなどの仕組みによって行われ、改善、変更、異常のみを管理することによって、全体の業務が遂行されている。そのため、管理の対象が極めて少なくなり、仕事がわかりやすく各自の役割もはっきりして、お互に連携良く仕事が展開できている。 このことは、仕事の課題の選択の優先度や分担の決定を容易にし、改善成果も目で見て判るようになる。そのため、人々の仕事の成果も客観的に評価出来、適正な人事考課を可能にしている。 (次号に続く) |
||||
■無断複製・転用・販売を禁止します■ Copyright©Iwaki Production Systems Research Ltd. 2005- |