発行者 岩城生産システム研究所

編集者 IPSインターナショナル
   平成20年10月15日発行 第076号
 ― 目 次 ― 


  
 「自己管理を前提にした経営改革F」 岩城生産システム研究所 岩城宏一



 「自己管理を前提にした経営改革F」
滑竢髏カ産システム研究所 岩城 宏一



おわりに


 現在では、世界中の多くの企業において、その組織内での人材が生かされることなく、殆んど無為に放置されているのを見ることが出来る。このような現状は、人材の十分な活性化と活用という点では、我が国に留まらず、世界中の企業が直面している、大きな課題であるように思う。
 この課題の解決に取り組もうとするとき、トヨタ生産方式の生産現場で、一所懸命に働き続ける人々の姿から、多くの示唆を得ることが出来る。即ち、トヨタ生産方式は、すでに述べたように、その組織に底流する基本思想や、実際の組織及び運用方法が、現在のものとは全く異なる。
 このことは、現在の多くの企業で見られる人材の浪費の主な原因は、その組織と運用の仕方に、基本的な問題があることを示している。昨今、議論されているような、終身雇用制の是非、人事考課制度に関するいろいろな問題等の、手法上の問題に留まることはなく、この問題解決のためには、抜本的な改革が必要である。
 組織のこのような抜本的な改革は、人間の持つ“支配欲”等のいろいろな情念に根ざした要因に関係している。それらを解決して、人々が生き甲斐をもって働けるような組織をつくりと定着には、長い年月にわたる、改革のための努力を必要とする。
 このような活動を長期に亘り継承していくことは、目まぐるしく環境が変る、現在の企業においては、実際問題として、大変難しいことである。しかし、企業が生存していくためには、この問題の改革は避けて通れないことであり、現在の組織や運営を温存しつづけることは出来ないだろう。
 この改革を必然化するエネルギーは、わが国ばかりではなく、世界中の企業の職場の中に広く蔓延し、日増しに力を養いつつ一大勢力となっている。この動きを主導する勢力は、経済及び政治的な制約から自立した人々であり、しかも彼らは企業を直接支えている。
 彼らは自らの職場を、自分にとって生きがいのあるものにしたいという、切実な願いのもとに行動している。それへの適切な対応は、今後健全な企業活動を維持する上での、極めて重要な経営課題であろう。
 この背景には、当然それを必然化する社会情勢がある。即ち現在社会は、今だ多くの問題を残しながらも、かってに比較し、世界中の人々が政治的抑圧から開放され、経済的にも随分豊かになってきている。
 このように、社会は大きく変化してきているにもかかわらず、現在の職場の組織と運用は、旧来の制度をそのまま踏襲し、はっきりした反省と改革が試みられてきていない。過去の制度の原型を依然として温存し、その枠内での問題の処理や改善に終始している。そのことが、現在社会に適合出来なくなっている状況を生んでいる。
 企業は組織と運用方法を、現在社会に適合するように、今は改めなければならない時期にある。その理由は、前述のように政治経済の情勢の変化ばかりでなく、消費社会そのものも大きく変化してきている。人々の消費は高度に多彩化し、複雑化している。このような中で生きていくためには、企業はその市場のニーズに対応していかなければならない。


(以下次号につづく)





■無断複製・転用・販売を禁止します■
Copyright©Iwaki Production Systems Research Ltd. 2005-