発行者 岩城生産システム研究所

編集者 IPSインターナショナル
   平成20年10月1日発行 第075号
 ― 目 次 ― 


  
 「自己管理を前提にした経営改革⑥」 岩城生産システム研究所 岩城宏一



 「自己管理を前提にした経営改革⑥」
㈱岩城生産システム研究所 岩城 宏一



 我々と共に、トヨタ生産方式の導入に着手して数年以上を経過している多くの会社が、丁度経営改革を全社に向けて展開する時期にある。そのための具体的な第一の着手は、経営トップが自ら、生産革新から経営革新に向ことを全社に向けて宣言し、先頭に立ち行動を起こすことであろう。

 その具体的な行動の第一歩は、直近の経営諸目標を、組織全体が改善し成長することを前提に、会社が必要とする挑戦的な目標に見直し、全社に向けて改めて宣言することから始まる。これによって、一気に改革の機運が高まり、風土の改革や“PDCAのプロセス”の確立に向かって会社が動きはじめる。

 多くの会社が、過去に挑戦的な目標を公表し、それが言葉だけに終わり、社内外から批判された経験をしているだろう。それは多分、可能にするための十分な体制がない中で、気合だけの公表である場合が多く、トヨタ生産方式への移行が進展している状況とは著しくことなる。

 生産方式の変化をより正確に見てみると、“生産現場の変革は、改善成長を前提にした新たな経営組織と運用が、その会社の組織の中ですでに現出している”ということである。さらに、会社の全ての動きの要である生産現場の改革は、他の部署の動きに大きな変化をもたらし、その改革の波は全職場に一気に広がろうとしている状況にある。あとは最後の堰を外すだけである。即ち経営トップ自ら経営目標値を改め、その実現に向かって挑戦する決意をし、宣言することである。

 多くの場合、生産現場の強化または、海外から自らの職場を守るため、生産現場の直接的な必要性から、はじまったトヨタ生産方式への移行は、生産現場のみならず、経営活動全般に大きな影響を与え続けている。

 その根本となる具体的な変化は、維持を前提にした諸活動を、改善を前提にした目標実現型に変え、その生産関係の組織と運用を統制型から自己管理を前提にした、全員参加型に変えたことになる。

  またこの生産現場の組織と運用は、全社の一連の経営組織と運用の重要な部分を構成しており、必然的に全社の改革をもたらし、またそのことが、生産現場の改革の継続上重要な前提条件になる。

 このことを理解していないと、せっかくの会社改革の絶好のチャンスを、ただ単に生産性の向上や在庫の削減等の一時的な効果のみに費やし、それ以上の展開に生かすことができない。 大切なことは、トヨタ生産方式への移行は、経営革新そのものであり、その活動の一環として生産場で改革が進行していることを理解しなければならない。

 前述のように、生産現場は社内のいろいろな活動を、直接有形の価値に変える要の部署である。また全社業務と密接に連携しているため、全社の会社業務への影響はきわめて大きい。さらに対象人員も多く、直接の仕事を支えている関係上、組織改革上もっともエネルギーの投入を必要とする場所である。従って、トヨタ生産方式の移行の進展は実質的には、会社改革の道程の60%以上は終了していることになる。

 逆に、他の部署の改革が如何に進行しようとも、生産現場の改革が進行しない限り、その活動はその時点で停止ししてしまう。なぜならば、最後の肝心の部署である生産現場が追従できず、従来の範囲に活動が停滞しているかぎり、会社としての出力は、その制約を受け大きな飛躍を期待することは出来ない。

 ついでながら、チャレンジするということは、現在の自分または組織のあり方を変えることを意味する。従って、現在の自分、または現在の組織が整然と存在していて初めて改善改革が成立する。即ちこのことは現在の日常の仕事が、清々と行われており、混乱を繰り返していないことである。

 そのために、仕事が清々と整備され異常が顕在化され、それに処置が施されているような日常が必要である。このことは会社業務全体が、先のPDCAを軸とした業務について、標準作業として作業方法そのものが確立されており、全社の仕事の標準化が進展していることである。 トヨタ生産方式の移行は生産部門の仕事の標準化が出来ていることであり、その重要な要件が、その会社の重要な部分で、すでに整備され形が出来ていること示している。


(次号に続く)





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