発行者 岩城生産システム研究所

編集者 IPSインターナショナル
   平成20年9月1日発行 第073号
 ― 目 次 ― 


  
 「自己管理を前提にした経営改革C」 岩城生産システム研究所 岩城宏一



 「自己管理を前提にした経営改革C」
滑竢髏カ産システム研究所 岩城 宏一



中期経営計画とその管理プロセスの構築」


 以上の説明のように、現在の多くの企業が直面している課題である職場の活性化は、従来の経営管理とは異なる、中期経営計画を基軸した目標実現型の経営への変革が必要である。その改革は、経営計画の作成および実行のためのプロセスの整備から始動する。

 計画の目的は、既に述べたように、組織を構成する人々の総てを管理し、統制することを指向するのではなく、自走力を持っている人々の行動を組織化し、方向づけることにある。

 そのため、経営計画書の内容は従来に比較し、統括的(活動の骨子のみで)でシンプルである。またシンプルにすることによって、初めて全体を一つの組織として統括することが可能になる。その内容は、せいぜいA−3の用紙一、二枚程度で済み、従来のものとは、比較にならないほどシンップルである。その一例を示す(別途掲載、本欄では省略)。

 また実際の運用面においても、前述のとおり従来と異なる。従来は部下に“やらす”ための計画書であったが、ここでは、計画の重点実施実行に担当者を記載してあるように、管理監督者が担当する業務を自ら行うための計画書である。具体的には、管理者は経営計画書によって、人々の業務をあらかじめ方向付けし、業務が滞りなく一体となって進行するように、管理者自身が部下を支援しつづけることになる。

 このような管理者の意識と行動の変化は、経営自身の、予算管理型から目標実現型の経営への転換から生まれる。この経営活動においては、物事の可能性の有無ではなく、会社又は組織にとって必要な業務と目標が、常に行動の指針になる。そのため、経営者や管理者が関係者との計画の打合せ時、担当者の現在の能力を(時としては遥かに)越えた業務と目標値が、しばしば計画書に取り込まれる。

 そのときの、目標実現の可能性についての両者の前提条件は、その課題に挑戦することによる、担当者自身の能力向上と、さらに経営者や管理者の参加と支援による、組織全体の潜在能力を引き出すことにある。 このように、目標実現型の経営計画は、その内容と運用の仕方が従来とは全く異なり、長中期及び単年度の経営計画の内容に対する関係者の、完全な合意と納得を目指す。

 そのため、計画の立案検討の場と、その実行段階における関係者間の分担業務の調整検討の場、所謂経営管理のPDCAを回すプロセスの構築が重要になってくる。

 この管理のサイクルの回し方は、多くの企業でしばし試みられている、 各経営段階(例えば、社長会、常務会、役員会等)における会議体を接点にし、その開催時期は“年度”と“年央”の 年2回以内の頻度が適切である。

 また、その会議体の運用については、次の各点について配慮が必要である。


1)この会議体は、社内の複雑に錯綜している人々の動きを整流化し、皆のベクトルを合わせることに目的がある。そのめ、従来良く見られるように、目標値の提示に止まらず、その目標を達成するため、基本方策(関係者の行動を同一軌道にするため)が明確になっていること

2)会社内で現在行われている種々の会議を見直し、この計画に関係する“立案検討”“実施”“反省”のPDCAに関連しないものは整理統合する

3)各会議の開催時期、主催者、事務局、出席者、決裁者、審議事項等の恒例化及び審議書類のホーマット化を行い、会議の運用方法の標準化を進め、判りやすくする

4)この経営計画書の目的は、社内の人々の足並みを揃え、その舵取りにあるため、その任務を担当する経営統括や事業部統括等の部分に留め、従来の方針展開のように、組織の末端まで計画書の作成を強要しないこと

5)計画書に取り込めない事項は、計画書に補足書として添付し、さらには直接部下の仕事をサポートすることの中で、現場との直接対話を通じて意図の徹底を図る


(次号に続く)





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