発行者 岩城生産システム研究所

編集者 IPSインターナショナル
   平成20年8月15日発行 第072号
 ― 目 次 ― 


  
 「自己管理を前提にした経営改革B」 岩城生産システム研究所 岩城宏一



 「自己管理を前提にした経営改革B」
滑竢髏カ産システム研究所 岩城 宏一



 本社業務が複雑になり肥大化すればするほど、会社全体の組織は機能しなくなる。なぜならば、多くの場合本社の持つ組織の統括機能は、前述のように人々の全人格の支配を限りなく指向する。そのため、その支配が細部化され強化されればされるほど、人々の自立心や自我に根ざす自衛力が働き、その管理は形骸かされる。そのため、如何に立派な本社ビルや組織を造っても、結局人々が受け入れる範囲しか機能していず、無用な長物であるばかりでなく、その存在自体が組織を麻痺させ、また膨大な経費を発生させて会社の体力を消耗している。

 一方後者の特徴は(推進力)働く人と舵取り者がはっきりと区別され、各々が独立した専門業務(人格)として分業化していることである。即ちどのような業務を分担するかは、管理者と働く人との事前の合意事項として納得しあっている。

 また従来は管理者の重要な管理事項であったその仕事の出来栄えと遂行度合いは、隣接する仲間(後工程、前工程)の進度のニーズを察知することによって、働く人々の自己管理に委ねられている。そのため、本社での統括機能は舵取り、即ち中期経営計画に取り込まれた、経営方針に関連する事項の管理が主業務になり、必然的に肥大化した本社組織は縮小されることになる。

 しかし、このような組織の必然性とは無関係に、人間の実際の行動は、物事を、しばしば思いがけない方向に展開する。その典型的な例が、人間のもつ顕示欲や支配欲に根ざす行動であろう。企業における本社は、それらの欲望を満たす象徴的な場であろう。

 従って、多くの人々が本社所属の方向に靡く傾向の中で、それを断ち切り、本社組織の簡素化を実行することは、いろいろな問題に遭遇する。

 簡素化に当たっては、従来のような無節操なリストラや安易な降格等は、経営の責任を転嫁することであり、会社の活力を著しく損なう。そのため、余剰人員一人ひとりの適材適所を見極め、配転により人々がより良く活躍できるように、支援し続けることが重要である。 大切なことは、現在いる人々の削減ではなく、生かすことに新しい組織の目的がある。

 トヨタ生産方式の導入により、生産現場では多くの余剰の人員を生み出した。それと同様に、会社経営全体の改革も、本社のみならず職場全域にわたり、少なくとも50%程度の余剰人員が発生する。従って、人員を空かす改善と平行して、これ等の人員の活用の場の創出が、この改革を推進する上で重要な課題になる。

 そのための一般的な方策として、社外への出向や新記事業の立ち上げ等取りざたさられているが、改善の成果と同時期に、これ等の事業をタイミングよく展開できるとは限らない。

 生産現場では、改善で発生した余剰人員によって、社外に流出していた仕事の取込を優先し、大きな成果をあげることが出来た。間接部門でも同様の可能性を探り、人員の活用を優先することが必要である。改善の成果は言うまでもなく削減人員ではなく、それらの人達によって新たに創出された稼ぎに他ならない。また人の削減よりを生かすことを常に先行することが大切である。

 そのような経営環境は、会社全体の中期目標を掲げ、その実現に向かって活動を展開することによって、あらたな能力や人材の必要性を顕在化する。この点に対する配慮を怠ると、改革そのものが陰湿になり進展しない。(以下次号)


(次号に続く)





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