発行者 岩城生産システム研究所

編集者 IPSインターナショナル
   平成20年6月15日発行 第068号
 ― 目 次 ― 


  
 「生産現場の改善を阻むいろいろな要因」 岩城生産システム研究所 岩城宏一



 「生産現場の改善を阻むいろいろな要因」
滑竢髏カ産システム研究所 岩城 宏一



 メーカの生産現場は、会社内の人々の働きを受け止め、直接的な収益としての価値に具現化している要の場所である。そのため、生産現場のあり方によって、他の部署の業務は大きな影響を受け、生産現場が健全に機能しないかぎり、会社そのもの存続が安定しないほど重要な部署である。

 しかし、一般的には生産部署は軽視されがちで、生産現場を管理することを業務とした間接部門を上流に配置し、生産現場は常に受身的な存在を強いられている。そのため、本社や管理部門の行動の影響を受けやすく、急速にそれらに同化してしまう。
 生産現場のトヨタ生産方式への移行が終盤に近づき、その効率化が進むに従って、関連する間接部署との連携が一層密接になり、お互いの相互作用の影響が、生産現場にはっきりと顕在化してくる。特に営業、生産管理、資材部門、新製品開発等の動きは、直接日々の生産現場の活動に影響を及ぼす。
 従って生産現場の改善をさらに続行し、生産を平準化しシステム化を進めようとするとき、先ず密接に連携する営業、生産管理及び新製品開発等の業務の改善が重要なテーマになる。

 例えば、営業部署のまとめ出荷指示、たまには納期忘れ等々の改善。また生産管理部門では、コンピュータによる生産管理システムから“かんばん”化への切り替え等、生産管理業務そのもの改革。新製品開発では、図面の段階での品質原価の造り込みや生産準備の不備のため、品質不良の多発、部品欠品等々の改善。
 このように、正常な生産現場を乱す数々の現象が、後を絶つことなく日常的に発生している。これ等の混乱は生産現場の改善を阻むばかりでなく、苦心の改善成果を、あっという間に壊してしまう。

 さらには、これらの直接な要因の他に、間接的な要因が社内には蔓延している。これは、生産現場の改善の継続について、挫折感を醸成する。例えば生産工場の大きな改善成果にもかかわらず、会社全体のロスが大きく、改善効果がその中に埋没し、会社全体の収益改善として、はっきりと顕在化しない。
 またそのような問題に対して、改善は生産工場の問題で、自分達間接部門の問題ではない。すでに一所懸命やっているとして、自ら少しも改善しようとしない社内の風潮等々。
 さらに多くの場合、生産現場の改善は、工場のトップの強いリーダシップによって支えられている。ところが、生産工場の改善の継続の必要性より、本社の都合が優先し、無用なキーパーソンの人事の移動が頻繁に行われ、その都度波紋の吸収のために、多くのエネルギーを消耗している。

 このように、高い水準の生産現場をめざして、さらなる改善を継続しようとするとき、多くの阻害要因が顕在化してくる。しかもそれらは、生産現場自身の問題ではなく、それに連携する他の部署の業部に関する問題が中心になってくる。
 先ずその着手は、生産活動の正確な流れづくり、即ち生産の平準化及びシステム化に直接関係する、営業、生産管理及び新製品開発業務の仕事を、お互いに連携を可能にする水準まで、改善することから始まる。
 このこと自体は、何も難しいことはなく、関係者間で話し合いで直ぐ改善出来ることである。しかし、実際は多くの場合、この大切な改善を目の前にしながら、手を触れることさえ出来ず、傍観のまま時間を浪費しているのが実態である。これはご存知のように、その活動を統括している上司の了解を取り付けないかぎり、担当者間で進めることが出来ない仕組みになっているためである。


以上




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