発行者 岩城生産システム研究所

編集者 IPSインターナショナル
   平成20年6月1日発行 第067号
 ― 目 次 ― 


  
 「トヨタ生産方式への完全な移行のための新たな課題」 岩城生産システム研究所 岩城宏一



 「トヨタ生産方式への完全な移行のための新たな課題」
滑竢髏カ産システム研究所 岩城 宏一



 約10年近い間続いた、NECグループの二十数拠点に及ぶ各生産現場の、トヨタ生産方式への移行の活動は、流れを通す段階から、正確な流れづくり及び管理された流れづくりへの、最終段階への展開に向かっている。それを機に、私自身の体力的な問題もあり、去る3月末をもって、これまでの関係について一応の区切りを付けることにして頂いた。

 各生産拠点は、今日に至るまでの間、在庫、品質、生産性、人材の育成等各分野において、圧倒的な改善成果を挙げている。生産性の改善に至っては、殆どの拠点が、数倍以上という驚異的な成果を収めている。これらの成果は、当然のことながら会社全体の収支を改善し、会社の窮状を救い、会社組織の活性化のための一原動力になっている。

 NEC殿の各拠点のこれからの改善テーマは、生産の平準化を徹底し、標準作業の一層の精度の向上と、それの全社関連業務へ拡大し、生産活動全てが自律的に(自働化)機能する、大きな一つのシステムとして完成することにある。
 それに伴い、全ての生産業務は定常的にはそのシステムによって支えられ、ただ異常時と変更時の管理のみですむとになる。
 システムとして完成することによる経営効果は、さらに50%以上の生産の向上、品質、在庫削減等、直接的な経営成果をもたらす。その効果は言うまでもなく、通常の予測を遥かに越えたものである。しかし、その直接的な効果より、今後の経営活動にとって、より重要な影響を及ぼす。

 即ち、トヨタ生産方式への完全な移行によって、生産に関係するすべての業務が何も混乱なく、一つのシステムとして整然と機能することによって、全社に広がる、その他の複雑な業務も分かりやすく簡明に整理され、機能的な会社組織の構築と運営のための重要な礎石が築かれたことになる。
 生産現場は、経営活動の一翼を担い、その強化は会社経営の当面する危機をしのぎ、その経営基盤の強化のために行う。このことは当然のことながら、経営が継続できない限り、如何にトヨタ生産方式による強い生産現場を造り上げても、それ自体で存続することは出来ない。

 従って、生産現場の強化は、会社の経営体質を改革し、その基盤の充実を実現することによって、初めて所期の目的を達成することになり、当然そのことを狙い、改善活動を継続しなければならない。
 この状態をさらに発展させ改善を継続していこうとするとき、その活動はNEC各拠点での改善は、生産の平準化を徹底し、標準作業の一層の精度の向上と広がりを追求していくことである。しかし、現実はその活動のみでは、次の段階の“正確な流れ”“管理された流れ”づくりは、多くの場合進展しない。
 元来一つの会社の中では、生産現場は他の組織と無縁ではなく、密接な連携のもとで機能している。しかも、生産現場の整備が進行するに従い、他部署との連携がより密接になり、相互作用の影響が強くなってくる。従って生産現場の変化に伴い、他の組織の改革が重要な課題になってくる。
 特に生産工場は全社の働きを、直接お金に変換する要なめの部署であり、他との相互作用の影響度合は非常に強い。そのため、これからの改善は、生産部門のみに止まらず、先ずは生産に直接関係する部門、最終的には経営全体へ波及させなければならない。そのことが、むしろ直接生産現場の改善より、重要な改善テーマになっている。

 今回私が、長年続いたNEC殿との関係に、一区切りを付けた理由は、改善の主な対象が、直接生産現場から経営全体に移行したことにある。このことは、NEC殿に限らず、当社が関係する多くの会社が同様の問題に直面している。
従って、“トヨタ生産方式への完全な移行のための新たな課題”として、次号以降に連載して、関係者の今後の改善活動の一助としたいと思っている。


以上




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