発行者 岩城生産システム研究所

編集者 IPSインターナショナル
   平成20年3月1日発行 第061号
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 「トヨタ生産方式の基本は三本柱が正しいA」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一



 「トヨタ生産方式の基本は三本柱が正しいA」
滑竢髏カ産システム研究所 岩城 宏一



 当時(昭和50年頃)では、トヨタ生産方式は現在ほど世の中で評価されていず、大野先生たちは、“トヨタ生産方式やっている俺達は、トヨタの中でも少数派だ”と言っていました。そのような事情で、トヨタ生産方式をつくりあげていく過程の環境は、全てが順風というわけではなく、いろいろな困難や障害の中で、展開されてきたことが容易に想像できます。
 そのような中で、当時の喜一郎社長の「アメリカに追いつけ」の号令のもと、日本式製造方法の実現を追求していくなかで、豊田佐吉翁の「自働化」と、喜一郎社長の「ジャストインタイム」は、それを実現するための行動上の重要な指針であり、また精神的な支えであったことが容易に想像出来ます。
 従って、大野先生がトヨタ生産方式につい語るとき、その活動を支えてきた「自働化」と「ジャストインタイム」を、トヨタ生産方式の基本的な二本の柱とされるのは、当然のことと理解できます。すなわち、「自働化」の豊田佐吉翁と「ジャストインタイム」の豊田喜一郎創業社長の偉大な二人の方の想いを実現するために、大野先生達は必死で働いてきたと言うことでしょう。
 しかし、トヨタ生産方式が形成されたこのような経緯とは別に、現在我々の目の前のトヨタ生産方式そのものを客観的にみてみると、明らかに生産の平準化は、重要なもう一本の柱であることが分ります。このことは、トヨタ生産方式の構成と、働きを調べてみると容易に理解することが出来ます。
 トヨタ生産方式は生産工程の構成を、従来の“工程の横もち”を“縦もち”に変え、さらにその機能の仕方を“先頭から押し込んで流す”を“下から引いて流す”に変えました。これは、通常の常識を覆す程の大変大きな転換であり、従来の生産方式とは非常に大きな違いであります。また、それによって始めて「ジャストインタイム」が可能になりました。
 “縦もちにかえる”はご存知の通り、フォードシステムに代表されるベルトコンベアーを使った生産ラインによって、既に多用されている衆知の方法であります。しかし、大野先生による従来とは逆の“下から引いて流す”ことの発見によって、「ジャストインタイム」は、従来とは全く違った可能性を開くことになったのです。
 ベルトコンベアー方式は、ベルトの中の各工程は「ジャストインタイム」に連結しているが、その構造と機能上、適用できる範囲は組み立てライン等の極く限られた部分のみであり、生産現場全域に広げることはできません。
 そのためベルトコンベアーによる「ジャストインタイム」の効果は部分的なものになり、全体の経営収支上は効果が小さく、限定的なものになってしまいます。 しかし“下から引いて流す”は、従来の部分的な「ジャストインタイム」を、品物が移動する全組織に、一気に広げることを可能にしました。
 このように、従来の生産方式をトヨタ生産方式にかえることは、品物が移動する全工程を、お互いにジャストインタイムに(同期して)働くように構成しなおすことになるのです。またそれによる効果は大変大きく、生産性や品質の向上、仕掛の削減等あらゆる分野に及びます。(以下次号)




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