先日私の友人が“間違ったトヨタ生産方式”という少々刺激的な題名の本を出版しました。その本を拝見すると、筆者はこの分野の出版物を大変良く調べていることが理解できました。その中で、“トヨタ生産方式の基本は「ジャストインタイム」と「自働化」である”と述べています。
かつて、私が「実践トヨタ生産方式」を出版する時も、そのことが他の友人から指摘されましたが、私は迷うことなく“トヨタ生産方式の基本は「ジャストインタイム」と「自働化」と「平準化」の三本柱であると書きました。
そのようないきさつ上、トヨタ生産方式の根強い二本柱論が気になり、改めて大野耐一先生の“トヨタ生産方式”を読み直してみました。ところがその中の随所で、確かにトヨタ生産方式は「ジャストインタイム」と「自働化」の二本柱を基本にしていると書いてあります。
トヨタ生産方式の原典としての書物の中に、大野先生が書き残しているのであるのですから、多くの人達が二本柱論を信じるのは当然のことで、私はここで初めて、二本柱論が世の中に根強く浸透している理由が分りました。
しかし、一方トヨタ生産方式の基本は、三本柱であると考えている人達も、沢山いるのです。私もその一人ですが、なぜならば、私達は大野先生から、直接、トヨタ生産方式の基本は三本柱と教えられてきたし、また自分達の実際の生産現場の中で、平準化がトヨタ生産方式の中で、如何に大切な要素であるかを実感しているからであります。
また大野先生も、「生産の平準化は、トヨタ生産方式における重要な条件であると」と述べています。即ち、トヨタ生産方式の基本である「自働化」と「ジャストインタイム」は、生産が「平準化」されてはじめて可能になるということです。
生産現場に詳しい人は、お分かりのことと思いますが、生産が平準化(変動することなく安定すること)されないかぎり、各工程は“自働的”に“ジャストインタイム”に動くことは出来ません。
即ち、誰からも指示されることなく、各工程が自律的に、必要なときに、必要なものを必要な量だけつくることは、決まった時間に決まったように、仕事が繰り返されるため、誰からも指示されなくても、仕事が出来るということであります。これが毎回仕事が変動してくると、とてもそれに追従することは不可能であります。
では、何故大野先生はトヨタ生産方式の基本を、二本柱と書かれたのでしょうか。その真相は、大野先生が生産現場でトヨタ生産方式を構築していく過程の中にあるように思います。
つづく
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