開発革新推進の切り口として「品質とコストのつくりこみ」活動について、前回の(3)図面の完成度向上活動に続き、今回は(4)原価企画活動の具体的活動実施例を挙げて行きたい。

４.原価企画活動

　新製品開発の量産に入るまでに原価の目標値を達成させる活動が原価企画活動であり、この活動は開発の業務体系の節目節目の5つの会議体と同期させる必要がある。ここで目標原価の設定は大変重要である。まず前述のように「売れる価格―欲しい利益＝目標原価」の考え方から目標を決める。この原価企画目標は「製品化企画書」で内容を具体化し、新製品開発業務体系の「製品化企画会議」で審議し決裁される。決裁されてはじめて次のステップとして設計に着手できるのである。ところが量産後、採算性が悪いので設計部門が原価低減活動を行っているという話をよく耳にするが、これは目標原価が不明確のまま設計に着手してしまい、出来上がってから材料費・組立費・経費・利益等を積み上げた結果、売価より高くなってしまったという例であり、開発の仕事のやり方に問題があると言える。設計に着手する前に目標原価が明確になっていなければ、設計チャレンジの難易度も分からないので、設計者のやれる範囲のベストと思われる設計になってしまい、後は出来上がりの結果判断ということになる。これでは新製品で常に利益を確保することは難しい。

　「製品化企画書」の中の原価企画目標の売価は、営業部門が行っているベンチマークによる競争力調査結果と客先要望価格等の検討に基づき、売れる価格として決まるので、利益を出すための目標原価はおのずと見えてくる。しかし目標原価の達成手段・方策を「製品化企画書」の中で、ある程度明確にしておかなければ目標原価は絵に描いたモチで、後工程の開発・設計部門に丸投げの形となり、設計部門が大変苦労することになるし、また原価達成の方向を探る検討に時間を食われ、結果的に開発遅れ等の原因になる。従って製品化企画部門は製品化企画書の中で、原価達成のための方策・方向性を盛り込むことが重要で、それに基づき構成する部品までばらしての材料費見積もりや組立工数、発生する金型費、設備投資金額、諸経費等原価を構成するファクターを具体的にする必要がある。

　原価企画活動は開発・設計部門だけでなく、関係する全部門巻き込んで量産までに目標を達成する活動としたい。そのためワーキンググループをつくり、目標達成のため、それぞれに細分化した原価目標を立てて、自分たちの役割・担当分を明確にした上でのモチベーションを高めた活動が大切である。ワーキンググループとしては設計チーム、つくり方チーム、買い方チーム、品質チーム等をつくるとよい。目標に対し成り行きではいくらになり未達額はいくらかを「見える化」し、未達額に対してはさらに低減アイテムの掘り起こしを行い、それぞれの効果期待値を算出して追い込んで行くのである。このように定期的にその成果を検証し、それをふまえ修正していく原価企画検討会の仕組みにより、PDCAのサイクルが回り、量産までに目標を達成できるようになる。
　この新製品開発毎に取り組んでいく活動と併行して、ベンチマーク手法の整備、IT活用によるコストテーブル等原価見積のツールの整備、部品点数の削減・標準化、適正仕入れ先選択・発掘等マネジメント面での改善にも取組むことが大切である。


以上