発行者 岩城生産システム研究所

編集者 IPSインターナショナル
   平成20年1月15日発行 第058号
 ― 目 次 ― 


  
 「開発革新活動の取組み 具体例(3)図面の完成度向上活動」 岩城生産システム研究所 今井 嘉文



 「開発革新活動の取組み 具体例(3)図面の完成度向上活動」
岩城生産システム研究所 今井 嘉文



 開発革新を進めるにあたって具体的活動の実施例を挙げて行きたい。切り口として挙げた「品質とコストのつくりこみ」活動の一つである品質の早期つくりこみによる図面の完成度向上活動について述べる。

.図面の完成度向上活動

 品質は設計品質と製造品質に大きく分類することが出来る。
ここでは設計品質のつくりこみに的を絞ることにする。品質の早期つくりこみとは、設計の早い段階で設計品質が保証できる設計図面をひくことであり、これが図面の完成度向上である。
新製品開発では、高レベルの要求が設計に課せられ、それらの要求に対応し、図面の完成度向上を図るには、設計のやり方の改善が必要である。
開発期間が短くなりつつある中で、品質問題の発生防止活動としては過去に起きた問題・現在起きている問題を再び発生させないための再発防止活動と、新しい設計・設計変更をしたために起きる問題を想定し、設計段階で対処しておく未然防止活動がある。
前者の再発防止活動は過去の知見を標準化し管理することで、手が打てる問題解決型活動であり、後者の未然防止活動は新規点・変更点に潜む問題発見・問題解決をする創造的な仕事で目標達成型活動である。


 再発防止活動は、まず現在発生している問題を早期に解決しなければならない。
この場合重要なことは問題の真因をキチンと突き詰めることであり、そのために「なぜなぜを5回繰り返す、なぜなぜ分析」等の手法は有効である。
問題の原因を特定し対策をした後、同じような問題を出さないために設計標準・試験標準・チェックシート・過去トラ・作業標準等に落とし込むことである。また過去に起こした重要問題等もこれら標準化資料に落とし込まれているかの振り返りも必要である。


 次に未然防止活動は、新製品開発での図面の完成度向上・漏れのない評価・製造要件の先取りを実現する活動である。
新製品は市場競争力を高める観点からも新技術の採用は避けて通れず、品質問題はそのほとんどが新規点・変更点に起因しているのが実情である。
トヨタ自動車・トヨタグループでは開発における設計品質のつくりこみの手法として、新規点・変更点に着目したDRBFMDesign Review Based on Failure Mode)手法による未然防止活動を実施している。
設計標準に基づき標準部品を組み合わせて設計すれば、既知の問題に対する品質の懸念点は心配することがないので、新製品の開発では新規点・変更点のみに集中でき開発・設計の効率化が可能となる。
DRBFMFMEAをもっと絞り込んで、「新規点、変更点に着眼し、そこでの心配点を明確にし、設計者のFMEA結果を基に、関係者及び多分野の専門家等で問題点に気づく論議を行い、解決方法を決めるデザインレビューを行う」手法である。
まず(1)「Good Design」=良い設計:問題の少ない設計をする・品質を設計でつくりこむ、ロバスト設計、(2)「Good Discussion」=良いディスカッション:開発の初期に問題を発見、(3)「Good Design Review」=良いデサインレビュー:DRBFMワークシートに基づき設計者自身が見逃していた重大な問題に気づく、の3つの項目が大切であり、3つのGood Dを集めてGD(ジー・ディー・キューブ)* と呼んでいる。


 DRBFMの実施で重要なことは、形式的にならないこと、泥臭い議論をすること、物を良く見て、自分で考えること、専門家の意見を大切にすることであり、考えないと分からない創造的活動である。

 ※参考文献:トヨタ式未然防止手法GD3 吉村達彦 (日科技連)


つづく


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