発行者 岩城生産システム研究所

編集者 IPSインターナショナル
   平成19年12月1日発行 第055号
 ― 目 次 ― 

   「開発革新活動の取組み(2)」 岩城生産システム研究所 今井 嘉文

  
 「現場改善を進めるポイントは」 岩城生産システム研究所 水野 弘太郎



 「開発革新活動の取組み(2)」

岩城生産システム研究所  今井 嘉文


 次に後者の新製品の「品質とコストのつくりこみ」活動を整理する。これは次の2項目に分類することができる。


()a.品質の早期つくりこみによる図面の完成度向上活動

 まず現在発生している品質問題や過去に起きた品質問題については、「なぜなぜ分析」をしっかり行う。その結果をもとに真因を解明し設計標準・試験標準・チェックシート・過去トラ等に盛り込みしっかりと歯止めをかける必要がある。この既知の品質問題についての再発防止活動は、品質のつくりこみの根幹になるものであり大変重要である。
 最近は、フロントローディング、コンカレント・エンジニアリングの導入により開発・設計の早い段階から後工程部門も巻き込んでの品質つくりこみ活動がなされている。過去の失敗事例の盛り込みや関連する多くの部門の「気づき」を取り込むことで成果が期待できる活動である。
 さらに一歩進んだ活動として、現在検討されているのが、新規点・変化点に着目した未然防止活動である。新製品でおきる品質問題はほとんど新規点・変化点に起因しているのが実情であるが、この新規点・変化点により発生する問題は設計の段階では見えていない現象である。一般に設計者は自分の技術力の範疇で問題を予測し設計の段階で織り込んでいるが、それでも市場で品質問題が発生してしまう。この見えていない品質問題を事前に顕在化して設計面で手を打ち、図面の完成度を設計の早い段階で向上させる活動がDRBFM手法である。今までやれなかった未然防止活動を導入することにより、開発の効率化を図り、品質の向上が図れるものと信じている。


()―b.コストのつくりこみとして原価企画活動

 原価達成活動は、原価企画活動と原価低減活動に大きく分類される。原価企画活動は新製品開発の量産に入るまでに、企画原価を達成させる活動であり、設計部門が中心に取組む。一方原価低減活動は量産に入ってから、つくり方改善や買い方改善により毎年原価を下げていく活動である。
 新製品開発では当然原価企画活動を行うが、企画原価すなわち目標原価の設定が重要である。目標原価は競争力があり、中期経営計画に沿って所定の利益が確保できなければならない。
つまり、売れる価格−欲しい利益=目標原価 と積み上げの考え方ではなく引き算になるのである。
 次に企画原価を量産までに達成させる活動はワーキンググループを作り、それぞれのグループ毎の目標値を合意した上で、その実現を図ることが重要である。そのため活動成果を定期的に報告し検証するのだが、活動の「見える化」をすることにより、各グループの未達部分がどれだけかが明確になる。そして未達部分に対し、更にアイテムの掘り起こし等自律した活動ができるようになり、目標を達成することができる。
 原価企画活動は、新製品開発の業務体系の節目節目の会議体と同期しており、品質のつくりこみと併せて原価のつくりこみ状況をその都度報告することになる。このため量産前に企画原価を達成させる活動として大きな成果を期待できる。


以上が開発革新の進め方の概要である。
 モノづくりは人づくり、仕事の改善は、まずあるべき姿を描き、次にねらう姿を明確にし、常に現地・現物で危機意識を共有し、コミニュケーションをしっかりとって進めることが大切である。


つづく



 「現場改善を進めるポイントは」
岩城生産システム研究所 水野 弘太郎



今から20年くらい前、岩城先生の代わりに、トヨタ自主研に参加するチャンスに恵まれた。出発時岩城先生から“素手で生産を2倍に上げて来い”と宿題を受けた。生産の2倍はわかるが“素手“の意味が当時よく理解できぬまま出発した。
 トヨタグループの名古屋駅近くのTR社で各職場に別れ、私はスイッチの製造ライン2ラインの改善に配置された。
1ライン約10名位の編成で2ラインとも似たようなスイッチを造っており、2ライン共今まで何回も自主研を受け、ライン上には置場の表示、受け渡し場所の受け(置き)治具が作られ又、壁には“山積み山崩し表”が張られ今までの改善の苦心が見て取れた。
 現場約1時間の観察後、1ラインを私に動作改善をやらせてほしいと申し出て、1ラインを引き受けさせてもらった。
当時、先生が“ムダ動作の13項目”をまとめた頃で、作業者の動き(作業動作)つくりに肩を手で支え、又床にチョークで作業点、足の運びを描き、指導を受けていた、見様見真似で私もやった。
 もちろん以前の自主研で取り付けた、受渡しの小道具など、生産の障害となるものは、全部取りはずし、組立てた製品を“リレーのバトン”の様に作業者の“手から手に”渡すこと、又渡すタイミング(相手が寄って来た雰囲気を感知し、作業に入る一動作前に部品と共に渡す)、渡したら速やかに離れる動きについて、細かく動作を指導した。
午後再度スタート時、足の運び、体の動かし方 (特に組立品を次の人に渡すタイミングと離れるタイミング) について微修正を行った。
生産管理板は、今までいつも赤字?(生産未達は▲表示)であったが2時から(再指導後1時間)生産管理板が黒字化してきて、5時の作業終了時まで黒字記入(時間内目標計画の達成)になった。
 帰りの電車で先生の“素手で2倍”の意味を始めて実感した。2倍の生産性は上げることは、2日間でできなかったが(自主研の目標20%?は十分に達成した)素直に作業者と話し合い、作業動作、手順を丁寧に教え其の通りに作業をやってもらっただけである。
 今、ライン改善、改善自主研が方々で行われ、それに参加、又改善成果の発表に立ち会うことが多いが、改善はレイアウト、時間測定、治工具、小道具などもちろん大切であるが、まだまだ最初にやるべきことは、作業者と一体となってどう作業をスムース(リズミカル)にできるか相談することである。作業者と一緒となって作業のやりにくい障害を取り除き、作業の手順・リズム(必要数)を作業者の作業動作の中にやり易い作業方法(作業環境)を見つけることである。
 最初の改善は、まず動作を作ること(とんでもないレイアウトなどは例外として)
パイプ、軽量アングルの棚、台を作る前に(時に応じ必要であるが)作業オペレーターの一動作、一歩の修正、応授援のタイミング指導・訓練で繰り返し動作を作り上げることで、生産性・品質の向上など改善や自主研の即効性のある目的は充分達成できると、私は20年前自主研で得た成果を自信に考えている。
 悪いレイアウト、物の流れがわからない、使い勝手の悪い冶具など外科処置も必要であるが、繰り返し動作、作業の動作指導など即効性の有る方法に、不思議と改善マン・職制が、作業者の中に入っていかない改善が多いと感じている。まだまだ、素手で改善できること作業者・オペレーターが持っている問題点と話し合い障害物を取り除くことで充分な効果を発揮でき、又金もかからない改善が出来る。
現場改善は、静かに黙々と仕事をしている人がボールを持っており、どう投げてもらえるか、と考えている……


以上


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