発行者 岩城生産システム研究所

編集者 IPSインターナショナル
   平成19年04月15日発行 第040号
 ― 目 次 ― 

   「コラム」 NECパーソナルプロダクツ 伊藤 吉男 様

  
 「コンサルタントのひとりごと 〜全員参加による経営活動の薦め20」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一




 「コラム」
NECパーソナルプロダクツ梶@開発生産事業部 第一生産部 伊藤 吉男 様

岩城先生のご指導会が2000年8月からスタートし2006年12月まで6年が経過し第48回を数えました。

@ご指導会スタートの頃
 生産革新関連の教育を受け、従来の長大なラインから小さなライン(セル方式)へ、座り作業から立ち作業へ変わりましたが、まだまだ部分改善の繰り返しとなっていました。
いざご指導を受けると、今までのイメージとは大きく違い、直線ラインを考えろ、お互い助け合えるライン作り、又全体の流れを考えろ、物が入って来る時からお客様に届くまでを便で繋ぐ事、など言われましたがはっきり言ってよく理解出来ませんでした。

Aラインが直線化に変わった時
 まずラインを変えていく事から始まり、生産システム(ものづくり)の方々の手伝いを頂いておりましたが、何で勝手に俺の職場に入って来るのだと言う拒否反応があり、お互いに大声で怒鳴り合う場面もありました。特にラインの各工程はそれぞれ独立して繋がりがない為、ラインを直線化し見えるようにするには、かなりの時間が掛かり大変苦労しました。そう言いながらもラインの直線化が進み、1ラインは長いけれども見えるラインになりました。

B活人を行え、リレー方式
 先生は、人,現場を大切にする人で、活人した人は何処に行ったのか、そこできちんと生きた仕事をしているのか、本人が腐っていないかと本当に人を思いやる気持ちが伝わりました。
 ある時、ラインの活人を行えと言うご指導を受け、私も必ずそう来ると想定し組立4人でしたが1人抜く事は事前準備していましたので、はい分かりましたと答え1人抜きました。リレー方式を事前に対応準備していたので上手く流れました。しめたものだと喜んでいた所、あと1人抜けないかと来たのです。これには参りました。想定外であり焦りましたが、また1人抜いて2人でやってもらいました。なぜか2人のラインが動くではありませんか。この時はとても嬉しく思いました。作業者1人1人が良く理解しチーフを中心に多能工化が進められていました。一時はどうなるものかと青ざめましたが、みんなの協力で上手くいったと思っています。

Cフロアの見直し(部材を1階へ持って行け)
 フロアはどうあるべきなのか、と問い掛けられ物と便を繋ぐ事が大事で、しかも近い場所と要求されました。1階の事務所を空けてそこに部材を置きなさい、と指導会の前日夕方に先生から指導がありました。当時は2日間の指導会でしたので前日の指導は翌日成果をださなければならず、夜中まで掛かって1階物流棟にストアを作り部材を一部運びました。この時ばかりは何でこんな事をしなければならないのか、言うのは簡単、やる方はとてもきついと言う状態でした。部下にこの意向を伝える事が苦しく、将来はこう変わると言っても理解出来ず、又自分自信も半信半疑でした。

D物の流れを良くするためにフロアの全面見直し
 部材〜出荷まで流れるようにラインは全て直線にし、そこへ水すましが一方通行で搬送しました。全体の眺めを良くする事で悪さ加減がすぐ分かるようになりました。先生がいつもご指導の中で話されている「全体の流れが見えるように,異常がすぐ分かるように」の教えから進めた結果だと思います。これによって大幅な生産効率の向上,部材棚卸の削減という大きな成果に繋がりました。

Eチャンピオンの構築
 チャンピオンラインを作りたいと考えました。それは全ラインの見本とする事と併せてそこで働く人の人づくりを考えてのことでした。その為ラインを短く,動作を小さくする工夫として作業者一人一人のアイディアを盛り込みながら作り込みました。これにより生産性が向上し大きな成果を得る事が出来ました。

F最後に
 岩城先生は常に人を大切にし現場を愛する人です。何とか現場から間接部門,開発部門へ革新の幅を広げたいと考えています。即、結びつく品質改善について現場から設計,品質改革にも取り組んで行きたいと考えています。


以上




 「コンサルタントのひとりごと」
滑竢髏カ産システム研究所  岩城 宏一


全員参加による経営活動の薦め20


 
生産部門の改革に連動し、開発部門は比較的早い時期に業務改革が始まる。それは、生産現場が整備されてくると、設計の良し悪しが、作業のやりやすさ難しさ、品物の停滞等に直接目で見えるようになってくる。そのため、開発や設計部門の人達が、自発的にその改善に取り組むようになり、生産現場と開発部門との連携が始まる。
 製造業の場合、いろいろな仕事は結局“品物を開発して造って売る”に集約される。そのため、生産現場の改革に連動して、新製品の開発部門の業務が強化されてくると、実質的には会社全体が改革されたことに等しい成果を生む。
 
技術革新先導型の会社にでは、新技術に傾倒する結果として、生産はどこか適当なところに任せれば良いとして、生産活動を軽視しがちである。しかし前述のように、開発と生産は一体の活動であるため、もし両者が分離され連携が失われてしまうと、全体の経営活動ばかりではなく、開発、生産そのものも、競争力のある活動は出来なくなってしまう。
 例えば、かっては大きな脚光を浴び登場したIT産業も、現在では多くの企業が勢いを失い、集合離散を繰り返している。この重要な原因の一つとして、生産の海外委託等により、開発部門との連帯が消滅したことをあげることが出来る。
 競争力のある新製品は、当然のこととして、一般的に機能、価格、品質において、競合品に対し、常に優位性を維持しなければならない。技術革新先導型の企業では、良いものは高くても売れるとの前提で、これまでにない新機能の研究開発を最優先し、それによって価格の問題を避けようとしている。
 もちろん、このようなやり方も当然不可能ではないが、それは限られた製品分野で、しかもその分野での競合が広がるまでの期間に限定されるもので、広く普遍的なものではない。
 このような経営を指向する会社は、後続の競合者に対し差別を維持するために、常にヒット商品を開発し続けなければならず、その製品の当たり外れが経営に大きな影響を及ぼす。多くの例に見られるように、成熟した市場に根を下していない経営は安定することはない。
 このように、如何に画期的な新製品でも、その機能ばかりではなく、結局価格、品質の問題は避けて通れない課題である。新製品の図面の作成とその活動の展開は、一般的には開発部門が担当する。しかしその新製品の価格と品質は、開発部門より生産部門の、より良いものをより安く造る潜在能力によって、実際は決まってくる。
 
即ち、図面はその生産現場との連携の中で、“より良いものをより安く造れる” ような図面に仕上げられることになる。このことは、製品の新機能の開発は、開発部門が担当等するのと同様に、新製品の競争力のある価格の掘り起こしは、生産部門が担当し、新製品開発に直接参加していることを意味している。
 さらに製品の原価は、機能のように開発当初の設計で決まるのではなく、開発から生産打ち止め、またその後の市場での補修など、その製品のライフサイクルを通じて発生し変動する。従ってその新製品が企業の収益にどの程度寄与するかは、結局製品のライフ期間通して、如何に効率的に会社組織が機能したかによって決まる。
 このように、新製品の収益は、開発部門のみならず、関係する全社の業務との関係によって影響を受ける。したがって、そのような視点で開発部門を見ると、現在の多くの新製品開発の在り方には、改善しなければならない多くの課題がある。


(以下次号)



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