発行者 岩城生産システム研究所

編集者 IPSインターナショナル
   平成19年03月01日発行 第037号
 ― 目 次 ― 

   「日本舞踊から阿波踊りへ」 N社 古山 剛史 様

  
 「コンサルタントのひとりごと 〜全員参加による経営活動の薦め17」 岩城生産システム研究所 岩城 宏一




 「日本舞踊から阿波踊りへ」
N社 古山剛史さま

 『この位の仕事なら20秒くらいでやって下さい。いいか? フルヤマ君。』
人の名前をよく覚えてくださる方だと昔から感心していましたが、どうも私の名前は例外のようです。私の名前はコヤマです。
 私はN社に勤務する生産技術者です。弊社のものづくりを革新すべく、国内生産工場への出張生活を続けています。工場内の革新活動に同期して、生産設備も革新することが私の仕事です。
 電子部品工場では、大量生産型の生産設備を使うため、時間は比較的ゆったり流れます。(のんびりしているという意味ではありません。)仕掛けた製品は1時間後に出来上がる などはざらで、長いものはその何倍にもなります。プロセス時間が長いから、ある程度まとめて手離れさせたほうがいいんだよ などの使い古された言い訳に納得してしまったり?? します。
 この工場におけるモノと情報の流れのリズムは30分程度でしたが、能率と品質最大化のためには「秒」の単位で仕事をするしかないと決心し、新しいラインを構築しました。無論、私一人で実現したわけではなく、多くの技術者、工場関係者(※)のコラボレーションによるものです。ただ、その生産スタイルは私が十年来思い描いていたイメージに程近い形にすることができました。
        ※工場に古田(フルタ)という人物がおり、古田−古山 で読みが紛らわしかったのでしょう。
 ライン稼動後すぐに、ライン設計時にモックアップで検証したサイクルタイムを達成することが出来ましたが、複数の作業者のサイクルタイムが安定するまでには多少時間が掛かりました。このラインでの作業は、日本舞踊を3倍速にしたような動きで、この流れるような動きが私の好みでした。
『この位の仕事なら20秒くらいでやって下さい。いいか? フルヤマ君。』と指導いただいたのはこの時期でした。
 さてその後、圧倒的競争力を持たすためにはサイクルタイムを短縮すべきとの認識に立ち、実行することになりました。細かな改善を積み上げて、いいところまでは行きましたが、最後は設備がネックでした。作業のスピードに追いつかなかったわけです。手待ちをさせるわけにもいかないため、組合せのうまくいかない部分を自動化してしまいました。これで動きは阿波踊りです。「チャッチャカ、チャッチャカ仕事をしていく」感じになりました。
 『いいねえ。早く水平展開してください。いいか? コヤマ君。』 名前を覚えていただきました。

以上




 「コンサルタントのひとりごと」
滑竢髏カ産システム研究所  岩城 宏一


全員参加による経営活動の薦め17


 人々の働きの成果の評価は、人事考課時のみではなく、いろいろな場面で行われている。例えば普段の職場での同僚や、上司との会話や仕事の中等々、それによって人々は励まされ、またある時は落胆し、敏感に反応しながら働いている。
 このような中で定例的に行われている、昇給、賞与、昇進、移動、等の一般的な人事考課は、会社としての公の評価を、個人に直接伝える場であり、その実施時期や方法は、大概の場合会社規定等で定められている。それによって、昇給、昇進、管理職や経営者への登用などの、人事上の重要な決定がされ、働いている人達の生活や人生そのものに、直接大きな影響を及ぼしている。
 毎年の年中行事として、その時期になると、人々の喜び落胆などなど、様々な人間模様が造りだされ、社内にいろいろな波紋が広がる。しかし、その波紋も数ヶ月の時間の経過に伴い落ちつき平常に戻る。
 そのため、この年中行事も会社内の活性化という点については、多くの場合、現状維持にとどまり、組織全体の強化や進歩には、殆ど貢献していない。酷い時には勢力争いに発展し、会社を危うくすることさえ珍しくない。
 このような人事考課に関連する現状の問題点は、本来人事考課は、長中期的な取り組みの中の、会社組織の強化育成ための、一連の経営施策の一つであるにもかかわらず、実際は考課が単独で一人歩きしていることにある。
 会社の大小に係わらず、組織造りは人材の育成、成長に係わる重要な問題だけに、一朝一夕にはことは成就せず、長い継続的な努力が必要である。従って、当然人事考課は、長中期的な経営上の諸施策と、しっかりと連動したものでなければならない。それによって、はじめてこの問題に対する具体的な方策が、見えてくることになる。
 企業内での人事考課は、相対評価が一般的である。そのため、納得的な考課を行うためには、比較のための共通の基準や土俵の設定が必要である。中期経営計画で掲げられた目標と、それを実現するための基本方策が、考課のための共通の土俵を提供する。
 すなわち、中期経営計画を基軸に仕事を展開し始めると、てんでばらばらであった人々の行動が、徐々に整理統合され、はっきりした目標及び方策を共有し、まとまってくる。それによって、何をどの水準まで仕事を進めなければならないかは、お互いの日々の仕事の接触の中で理解し合い、また達成度合も各自の仕事の進行の中でお互いに把握することになる。
 これは、隊列を組み登山を試みる時、お互いに荷物を背負いながら、遅い人早い人、それぞれの力をお互いに肌で感じながら、前進していくのと同じことである。
 全社で目標及び基本方策を共有し、それを基軸に皆が組織的に連携して仕事することによって、自分が何をしなければならないか判りやすいということは、その当事者ばかりではなく、周りの人達にもそのことが、常に判りやすくなっていることであり、このことが評価を客観する上で重要なことである。
 このように評価が客観されてくると、活動の当初お互いに確認し合った、会社方針の重点方策と目標を全職場に掲示し、その重点方策と設定目標に対し、月次ごとに達成状況を自己評価の形で記録し、これを集計したものを、年度末人事考課の評価として用いうことが出来る。これによって、従来の考課を如何に客観的に行うかという、困難な問題が解決されることになる。

(以下次号)


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