発行者 岩城生産システム研究所

 編集者 IPSインターナショナル
   平成19年01月01日発行 第033号
                                                              平成19年1月元
 新年のご挨拶
                                          岩城生産システム研究所 代表取締役 岩城 宏一

 皆さん明けましておめでとございます。私共スタッフ一同、昨年中は大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。本年も相変わらず、ご指導ご鞭撻の程をお願い致します。

 皆様に置きましては、今日までの継続的な改善の上に、今年はさらに改善の積み重ねが進み、ものつくり体質の強化が、飛躍的に進むことを確信しております。皆様の一層のご活躍を期待致します。

                                                                      敬白



 お知らせ

「岩城生産システム研究所NEWS」第33号を発行させていただきます。

今回は富士通インテグレーテッドマイクロテクノロジ・熊谷 様及び、弊社・岩城 宏一のコラム「全員参加による経営活動の薦め13」を掲載

させていただきます。

なお、当社事務所は
1月4日(木)まで年末年始休業をいただいておりますので、ご了承お願い致します。

                                                                     業務部




「“TPS生産革新全社活動”2年間を振り返って」
富士通インテグレーテッドマイクロテクノロジ株式会社 製造部 第二製作課 SSV 熊谷 靖典 様

 木島先生の御指導を頂き、TPS生産革新全社活動を始めて早や2年が経過しました。

木島先生や岩城先生に時々褒めてもらい、また弊社、生産革新推進室の佐藤室長にも「レベルW“管理された流れ”の入口に近付いて来ている。」と言われて有頂天になり、暫く舞い上がってしまい、現在、その巻返しに大変苦労しています。
 それは、レベルVの“正確な流れ”が、まだ不完全だからです。所によっては、レベルU“強い流れ”の停止処置(異常仕掛防止)やインラインおよび多能工も完全では有りません。更に標準作業づくりと、その維持管理も生産予定の平準化が出来ていないのを言訳に、停滞させているのが現状で、品質向上にも苦しんでいます。
 とは言いつつも2年前と比較すると工場の景色は一変しました。
以前のジョブショップは消え去ってグループライン化され、山の様な仕掛りは無くなり、全てかんばんで後引きされて水すましにより定時(今後は+定量、定品が目標)供給・回収されています。その成果としてリードタイム短縮(1/2)、生産性向上(1.4倍)が実現できました。
 もしTPS生産革新全社活動を実施していなかったら、現在はどうなっていたんだろうと思うと、背筋が寒くなります。たぶん工場閉鎖か縮小統合または人員削減、倒産となっていたことでしょう。(しかし油断をすれば明日にでも有り得る)
 これからも木島先生の教えの「自分がやらずに誰がやる。今やらないでいつ出来る。」を合言葉に、「一人の百歩より百人の一歩」を目指し、本物の全社活動とする為、日々改善を実践して行きます。
 最後に、最近気に入っている“オシムの言葉”を記します。(一部私流の解釈です)
「TPSの向こうに人生が見える」
「君達はプロだ。休むのは引退してからで十分だ。」
「アイデアの無い人間も仕事は出来るが、プロにはなれない。」
「やることをやってもし失敗するなら、胸を張っていられるはずだ。」
「作り上げることは難しい。でも作り上げることのほうがいい人生だと思いませんか?」
(著作権に引っ掛かるかな?)

                                                                    以上



「コンサルタントのひとりごと」
岩城生産システム研究所  岩城 宏一
 全員参加による経営活動の薦め13


 仕事を判りやすくするために、会社全域にわたるすべての仕事を、繰り返し
のある仕事と繰り返しの無い仕事に二分し、前者は標準化、マニアル化し、後者を会社方針または経営計画として展開する。
 これを前提に、比較的判りづらい繰り返しの無い仕事を取り込んだ、会社方針について標準化を取り組むことになります。先ずこの標準化の着手に先立ち、注意しなければならないことは、トヨタ生産方式的な会社方針や経営計画では、その目的が、一般的なものとは異なる点であります。
 即ち一般的な方針展開の目的は、そのことを、組織内の人々に行わせることであるのに対し、ここで私達が取り上げている会社方針や計画は、各自の仕事を判り易くするためのものであります。この点に従来の方針展開とは大きな違いがあります。なぜならば、間接業務の改革に取入れようとしているトヨタ生産方式は、既にのべたように人々は自ら働く、所謂性善説的人間観を前提に成立している。従って、各自が担当している仕事そのもののやり方は、もともと当人たちの判断に委ねられ、その分野には誰も介入する必要がないということです。そのことを前提にして、上位者の任務は働く人々を支援する事が主テーマになります。
 一方、通常の方針や上位者からの指示は、仕事をその通りに行わせる色合いが強い為、仕事の方向付けや他との関係調整に留まらず、担当者の仕事の仕方まで立ち入り、けじめ無く仕事の指示をしてくることになります。
 このようなやり方では、方針に書いている文字や上司の言っていること自体は一応伝達されるが、人々の仕事の仕方まで変えるほど深く浸透することは大変難しいことでしょう。結局、当事者の考えまたは意に沿わないものは、それが標準化の有無に関係なく、それは理解されることはなく、結果的に判りづらい方針や、指示になってしまうということであります。
 このように、会社方針や上位者からの指示は、担当者に仕事をさせるためか、または仕事を判り易くするためのものであるかによって、組織内への浸透度合いは、大きく違ってくることになります。
 では、方針や指示に関するこの違いは、どこから生じてくるのでしょう。それを発信する側のもつ人間観、即ち性善または性悪的人間観に立脚しているかにより異なります。
 すでに述べた通り、トヨタ生産方式的経営活動では、方針や指示を出す以前に、その仕事は担当者に完全に委ねられたものとしての前提に立っている。その上で一つの共通の目的をもった集団組織の中で、お互いに任務を分担し会った、プロ同志として認識し合っていることであります。そのため発信する方針や指示の内容は、個々の仕事の問題より、お互いが担当する任務を円滑に進める上で必要なことが中心になります。
 一方普通の活動では、あくまでも方針や指示を出す側が主体者で、受けて側を従とし、それを前提にしているために、方針や指示は主体者側の都合や考えが常に優先することになり、受けて側の追従が難しくなってくる。
 このように、“仕事の判りやすさ”は、文章上や言葉上の問題ではなく、当然のことながら、如何にそれが受けて側にとって納得的なものであるかが、重要な要素であります。そこで納得的であるための重要な条件として、発信側の人間観、即ちお互いに任務を分かち合うプロ集団としての認識を、これまでに取り上げてきました。
 この問題は、仕事の背景となる思想的なことでありますが、具体的な問題として、その方針や指示は“継続的”であり、“シンプル”であることが大切であります。これは言うまでも無く、方針や指示が事あるごとに変わったり、また分厚い資料では、とても理解を徹底することは出来ないのは、当然のことであります。
 従って“継続的”であり、“シンプル”な方針や指示ということは、自ずとトヨタ生産方式的経営活動を前提とし、長中期的な取り組みを意味することになります。
 方針や指示はそれ自体でも、大変判りやすいものになるが、このように“継続的”であり、“シンプル”なことが、方針や指示の展開方法の標準化を容易にし、より効率的に、経営への全員参加をもたらすことになる。

(以下次号)
                                                                    以上

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