発行者 株式会社岩城生産システム研究所

 編集者 有限会社IPSインターナショナル
   平成18年11月15日発行 第030号
 お知らせ

「岩城生産システム研究所NEWS」第30号を発行させていただきます。

今回は富士通ゼネラルエレクトロニクス千葉裕子様及び、弊社・岩城宏一のコラム「全員参加による経営活動の薦め10」を掲載させて

いただきます。どうぞ宜しくお願い致します。

                                                                     業務部




「“かんばん”は楽しいデスヨ」
富士通ゼネラルエレクトロニクス株式会社  生産部  千葉 裕子 様

私の仕事は、製造現場内での補助材料や消耗品類の管理業務をしております。 それぞれのラインにこの業務を担当する

スタッフが、複数存在しておりました。

「トヨタ生産方式」導入が決定され、私達担当者にも、大きな波となって押し寄せてきたのは、今から4年程前でした。

「トヨタ生産方式を始めるがらよ・・・。 まず、かんばん作りがらだ、ヤッテミロ・・・・」

井上アドバイザーからの御言葉を合図に、私達の「TPS」が始まりました。

最初は 「クルマを作るのか?」 と思ったくらい何のことやらチンプンカンプンで、理解出来ないまま「かんばん」作りに突入

した訳です。


まず、製造内のあらゆる補助材料と、消耗工具をかき集め、食堂内に陳列して見ました。


私たち、4人 (女性)が中心となり、ザッと約1千点が、食堂を埋め尽くし、一同圧巻の悲鳴でした。

4人の元ギャル達は、材料と作ったかんばんとのニラメッコを始めました。 ポイントは、適正在庫と適正購入量です。 ここ

を洗い出すのに1ヶ月かかりました。

運用間際、井上アドバイザーより 「せっかぐ共通になったんだがら、管理する人も一人にすっぺ。 1番材料の種類が多い

裕子さんにまがせっから」と言われ、「ヒエ〜エ〜」でした。

「仕方がない。ここからは、一人だ。孤独に耐えて頑張ろう。」と心に決めました。

「サア、運用開始ダ゛」

                        

 ところが・・・・・。 連日のように起こる かんばん事件簿。 「かんばん紛失」 「かんばんが外れない」「同一人物が不当に

沢山持って行く」等の事件が一日の内に何件も起こったのでした。


最初は「いつか落ち着くサ」気分で過ごしていたのですが、流石に1年経っても落ち着かないのには、痺れを切らしてしまい

ました。


「かんばんなんてトヨタだから成功したのよ。ウチの会社じゃダメなのよ」とヤケッパチになり、やる気も失せていきました。

 この実態を、改善組みに打ち明けた所、@「事件簿を発生の都度、各ラインリーダーにメールしよう」。A「棚からの物の取り

出しをみずすましのみに限定しよう」と言う事になり、実行してみました。


 数ヵ月後、1ヶ月に、20件は発生していた事件が、5件位迄に減少していたのです。

あの「ヤッテミロ」の一言で始まってから、約2年半後、ようやく「らしく」なりました。

共通材料1千点⇒7百点に、中でも、消耗品は、アッチコッチに点在されなくなった分、購入量が、約半分になりました。

 しばし自己満足に陶酔しておりましたところ、「オイ、オイ、ついでだから事務部門もやっちゃえヨ」とは、社長と、部長の鶴の

二声でした。


「ヤッテミルカ。 想定外ダ゛、ケ、ド゛・・・・」のノリで腕まくりをし、事務棟に乗り込みました。

ここも負けてはいません。会津磐梯山並の宝の山で「全部持ってくのか?」の声等無視し、ひたすら集めて、事務部門に共通

棚第2号を設置する事が出来ました。


「ヤッター。これで、工場全体の購入ルートが一本化されるぞ。」

 ここまで来るのに、決して一人では出来ませんでした。多くのスタッフの協力に感謝致します。 ありがとうございました。

最期に・・・・。

主婦の発想と思って聞いて頂きたいのですが、台所の醤油や、マヨネーズ類に「かんばん」をつけたらいいなーと少し前

から考えておりました
理由は、カンバン1枚持って、スーパーに走れば、メモしたり、だぶって多く買物をしたりする事が無く

なるからです。いかがでしょうか?楽しいですよ。

                                                                    以上



「コンサルタントのひとりごと」
岩城生産システム研究所  岩城 宏一
 全員参加による経営活動の薦め10

 さらに、実際の生産現場では、生産の平準化によって各工程内の仕事は標準作業として、手順等の作業動作が決ま

っており、また後ろ工程からの引取りの
タイミングもばらつきは無く、一定のリズムで繰り返されています。そのため作業

する時、そのつどいろいろ考える必要はなくなり、従来のベルトコンベア
ー等による流れ作業での強制感や緊張感はあり

ません。人々は自分の自身の作
業リズムで気持ちよく仕事をこなしています。


 このことを、間接業務の一例として、新製品開発に関する製品開発から生産販売にまでの、一連の業務に当てはめて

みると、先ず流れを作るということは、
各部署の枠を超え、製品ごとに製品企画、設計、試験、生産準備、生産、販売

各担当者が一堂に会し、所謂プロジェクトを作るということになります。 こ
のことは、仕事の分担の仕方を水平(または横

持ち)分業を、垂直(縦持ち)
分業に変えることであります。


 このようにプロジェクトによる仕事の仕方は珍しいことではなく、何処の会社でもしばしば試みられていることであります。

しかし大切なことは、これ
を例外的または一時的なものとしてではなく、会社全体の定常的な仕事の仕方として広げること

であります。



 実際の活動は、従来通り例えば営業部、開発部、生産部等のまま残して、部長、課長等の管理職が、それらの機能を

横もち的に管理し、各部署の当者はプ
ロジェクトに席を置き、プロジェクトリーダを軸にした縦の関係を中心に動くことになり

ます。さらにこのような複数のプロジェクトを統括し、運用を管理
する(プロジェクトリーダ等が帰属する)部署を設置すれば、

組織の稼動はよ
りスムースに展開するでしょう。


 
このような仕組みに変えるだけでも、人々にとっては随分仕事は判りやすく、またやりやすくなります。 さらに生産現場

での生産の平準化のように、間接部
門においても、仕事の平準化を進めることがもし出来れば、仕事の展開は一層容易

になり、組織の効率が飛躍的に向上するがこと予想されます。


 
生産現場では、各生産ラインの生産する複数の品目ごとの生産数量を、毎日変動しないように平均化して、生産の平準

化を行っています。しかし、間接
業務では、各担当者の毎日の仕事の種類や量を、一定にすることは当然のことながらでき

ません。しかし自分の仕事と前後横の人の仕事の関係、例えば仕
事の内容、進度等が常に一目で判っていれば、改めて

会議などで打ち合わせし
なくても、相当の部分を他の人の動きに対応できるように、自己管理のもとで仕事を進めることが

可能になります。それによって間接業務においても生産
現場での平準化に近い効果、即ち仕事が判りやすくなり、また周り

とのより密
接な連携が可能になってきます。


 
間接部門での実際の仕事の現場では、お互いの仕事の関係の調整は大変重要な仕事であり、それにはいろいろな形で、

非常に多くの時間を費やしています。

会議室に多くの人々が集まり、打ち合わせをしている景色などは、その好例であります。

(次号につづく)


                                                                    以上


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