ジャストインタイムに対する時間間隔、即ちサイクルタイムが短く正確(厳格)なほど、いつも時間に追われることになり、とて
も耐えられないと感じるのが、普通の受け止め方でしょう.
しかし、前述の通りトヨタ生産方式では、その方が逆に仕事は楽に、また間違いなく行うことが出来るのであります。その秘密
は、トヨタ生産方式三本柱の内残る“生産の平準化”と“自働化”にあります。またこの点に生産現場だけではなく、間接部門
等の他の組織にも適用できる、人の働きに対する大変重要な条件が、包含されているのです。以下に人の働きと“生産の平準
化”と“自働化”との関係について見てみましょう。
私達の仕事の仕方はいつ仕事が飛び込んでくるのか、またそれを終わらなければならない時間がそのつど変わり、全く事前
に予測出来ないままに、強要的に仕事をしているのが普通であります。
このような状態で、仕事が終わるまでの時間、即ちジャストインタイムのサイクルタイムを短く、次から次に仕事が押しかけ
て来たのでは、大概の人は逃出してしまい、もっとゆとりもって仕事をさせてくれと言うことになるでしょう。しかし、もしジャスト
インタイムのサイクルタイムが同じ間隔で、正確に繰りし仕事がやってくる場合だと、この様相はまったく違ったものになります。
このことは、大勢の人の集団の行進やマスゲームなどを想定してみると、良く解かります。人々は笛や太鼓などのリズム乗って
気持ち良く体を動かしています。
人は体の動きによって、それを最も快適に楽に行う為の速さやリズムを持っており、それは決して遅くゆっくりしたものではあり
ません。通常の仕事の現場で見られる人々の動きより、はるかに速いものであります。
トヨタ生産方式では、ジャストインタイムのサイクルタイムを、短くすることは、不規則に飛び込んできた仕事を、規則正しく
リズムカルに繰り返しす仕事に変え体の仕事への順応性をたかめ、その負担をなくす働きをしているのです。それによって、
行進やマスゲームなどを行うように、人々は仕事の強制感や圧迫感から開放され、気持ちよく楽に仕事を進めることが可能に
なります。
では、トヨタ生産方式では従来の不規則的な仕事を、どのような仕組みによって、規則正しいリズムカルな仕事に変えているの
でしょうか?その仕組みを調べて見ましょう。
トヨタ生産方式での設備の段取り替えの改善は、“シングル段取り”等と呼ばれ、トヨタ生産方式を象徴する良く知られた
改善手法であります。この段取り替えの改善は、段取り替え中に設備がとまる時間を短くする、いわゆる段替ロスを減らす為
と一般的には受け止められがちでありますが、実はこれは前述の不規則的な仕事を、規則正しいリズムカルな仕事に変える
ための、重要な手段になっているのであります。
トヨタ生産方式は、従来の大ロット生産を小ロットに変えることは、大変よく知られていることですが、一度にまとめて造るの
をやめ、出来る限り少量づつ小分けにして造りたいために、苦労して段取りの改善を行うのであります。
決して段替えロスを減らすことが、段取りの改善の直接的な目的ではありません。これは前述のとおり、仕事をリズムカルに
するための大切な手段であります。
以上
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