発行者 株式会社岩城生産システム研究所

 編集者 有限会社IPSインターナショナル
   平成18年09月01日発行 第025号
 お知らせ

「岩城生産システム研究所NEWS」第25号を発行させていただきます。

今回は新光電気工業・五明 様のコラム「生産革新まっしぐら!」及び、弊社・岩城 宏一のコラム「全員参加による経営活動の

薦め5」を掲載させていただきます。どうぞ宜しくお願い致します。

なお、9月19日(火)は弊社事務所を臨時休業とさせていただきますので、ご了承下さいますようお願い申し上げます。

                                                                      業務部




「生産革新まっしぐら!」
新光電気工業梶@五明 正博 様

 生産革新を推し進めている方々と共通の目的と悩みを持った仲間として、このコラムへ投稿させていただきます、新光

電気工業の五明と申します。(“ごみょう”と読みます。)


 
弊社が初めて岩城先生による工場診断、現場指導会を受けたのが2003年春。著名な先生による指導会が始まると

聞き、ワクワクしながら指導会に臨むと、まず岩城先生から指摘された事は「物が多過ぎますね。不要な物を撤去してくだ

さい。」・「品物の流れが真っ直ぐになるように、レイアウトを変更してください。」・・・

「あれれー!そんな事から?なんかありきたりだなー。」 まだ岩城先生の真の凄さもわからず、生意気にもそんな感想を

持った事を覚えています。

 
とにかく言われるままに台車、棚、不要な仕掛かりなど、今本当に必要な物以外の撤去・廃却、そして、物の流れを真っ

直ぐ通すレイアウト変更と必死になって取り組みました。特に、かつて自分で導入したコンベアを「これは要らないから撤去

しよう!」と決断し、提案した時は何とも言えない複雑な心境でした。

 
思えばこれまでも全社的に“5S活動の取り組み”と標語を掲げ、何十年も活動をして来たはずなのにこんなにみんなで

一丸となってやりあげたことがあっただろうか? 少なくとも私が入社してからの記憶の中では無かったと思います。(しか

もこんなに片っ端から・・・。)

 
ひと通り不要物を撤去し、レイアウトの見直しを行った後、工場内にぽっかり空いた空間と遠くまで見渡せる現場を前に

「うちの工場こんなに広かったっけ?」というあまりにも素直な感想がわいてきました。

 
その後の試行錯誤の活動を通して、“後工程引き取りによる物作り”がようやく定着して来ましたが、物が溢れ、流れが

見えない状態でTPSの仕組みだけをマネしてみても、物作りが混乱するばかりだっただろうと、当初のこの取り組みの大

切さを実感しています。



◎改善活動を通じて得た事

 
改善活動も一進一退ながら着実にステップを進めて行く中で、それまでの座り作業によるバッチ生産から大きく改革すべ

く、電子部品組立工程の再構築を手掛ける事としました。

 
先生の教えを基に、自分なりの理想系を頭に描き “後工程引き取りを核とした、応受援のできる1個流しライン” をコン

セプトにラインの立ち上げに取り組みました。

 
今でこそ当初の200〜300%の生産性となったこのラインで、みんな当たり前の様にリズム良く作業をしていますが、

導入当初は半ば押し付け気味であったためか「面倒くさいことを始めたな。」、「大変な事をやらされちゃったな。」といった

表情が見て取れました。 しかし、作業者の意見を聞きながら一緒に改善を進めて行くうちに「ここはこうした方がもっとやり

易いよ。」などとうれしい要望を出してくれるようになり、信頼関係という絆を得たことで一気に改善が加速されて行きました。

 
“一方がやらせる、もう一方がやらされる”という関係ではなく、お互いに同じ目的を持ってラインを育てて行くという“信頼

関係”が成功への第1歩と気付き、“押し付けではなく、一緒にやりとげる!” ことを、その後のTPS活動における私のスタ

ンスとして生産革新に取り組んでいます。



◎多くの人との出会い

 
TPS活動を開始してから、岩城先生に直接ご指導いただけるというこの上ない幸せに加え、それまでは遠い存在だった

社長から「おう五明、ここ大分良くなったじゃないか。」「こら、お前が見ていながら何だこのザマは!」良きにつけ、悪しきに

つけ、声を掛けられる機会が増え、大変ですが楽しく活動させてもらっています。

 
また、社内・外を通して、生産革新を推進するという同じテーマの元に、多くの先輩、仲間と接する機会に恵まれ、中でも

それぞれの会社、部署で活動を引っ張る“真に尊敬できるリーダー達”と出会う事ができ、大きな宝とする事ができました。

これらの方々との出会いで得た事を活かし、“常に無駄を無駄と感じる事のできる感性と、必ずやりあげるという信念”を持

った行動を心掛けて行こうと思います。



◎岩城先生の不思議な力

 
初めての指導会から数ヶ月が過ぎ、岩城先生から直接ご指導を受けるようになったある時・・・

私 :「先生、このライン半分の人数で出来るようになりました。」

先生:「良くやったね、いいラインになった。」

私 :「ありがとうございます。」(やったー、誉められた。)

先生:「このラインなら、更に半分で出来そうな気がしますね。」

私 :「更に半分ですか?」(ひぇー!)

昔だったら最初から無理だとあきらめていたであろう内容も、岩城先生に言われると本当に出来そうな気がしてくるのが

不思議ですね。

 
もちろん生産革新の“真の目的”を忘れた訳ではありませんが、今でも岩城先生に誉められたいという一心で革新活動

を進めていると言っても過言ではありません。先生の“人と接する時のやさしい瞳、その奥から発する力強さ”がそう思わせ

てしまうのでしょうか。

 
最後に、私の勝手な思い込みかもしれませんが、岩城先生の指導を受けている教え子の一人という自負を持って、今後

も生産革新活動に取り組んで行きたいと思います。


                                                                    以上



「コンサルタントのひとりごと」
滑竢髏カ産システム研究所  岩城 宏一

 
全員参加による経営活動の薦め・5―



2、トヨタ生産方式に底流する経営思想(
2) ― 生産現場の改革


 
通常の会社組織の中では、予想外に人々は思うようには働けていないものです。生産現場をトヨタ生産方式に改めると

同じように、私が提案する全員参加型の経営に改革することに
より、恐らく三倍以上の力を発揮することになるでしょう。

 
既に述べたように、その主要因は会社全体が組織的に機能していないことにあります。そのため自らが今何をしなければ

ならないかが解らない、また解ってもお互いが連携していな
いため行動に移すことが出来ず、無為に一日を終わってしまう

ことも決して珍しくありませ
ん。このような状況は言うまでもなく、貴重な人的資源の膨大な浪費であり、この点の改善

すべてに優先する経営課題であります。

 
その有効な改善手段として、全員参加による経営活動、すなわち“将来のあるべき姿をはっきりと描き、その実現に向か

って全員が参加し、お互いに分担した職務の中で生き生きと活
動し、その日々の活動が、着実に目標に向かって積み重ね

られている。”への変革を私たちは
目指しています。

 
このような広範囲にわたる経営活動の変革は、実際問題として決して容易なことではありません。 しかし、生産現場を

トヨタ生産方式に転換することを、その変革の主舞台として
展開することによって、改革が具体的に進行し全体の改革が

大きく推進されることになりま
す。その主な経緯は以下の通りです。

 
トヨタ生産方式への変革のための改善手段が非常に具体的であるため、着手しやすく、またその変革が、生産に関連

する従来の組織及びその活動を、前述の“全員参加型の経営”に
置き換えてしまう。製造業においては、生産活動は実質

的には、経営活動全体の60%以上
を占めている。このことは、生産活動の変化は、経営活動全体の中の大半の変化を

意味し、
日々の業務のいろいろな分野において変化が波及することになります。

 
さらに各部署は、トヨタ生産方式の実際の生産現場や作業を通じて、全員参加のための組織の形態とその運用の仕方を

見ることが出来、また各部署の業務そのものが生産活動と何ら
かの形で関連しているため、生産部門が各部署の組織や

その運用上の改革の受け皿になり、
実際の改革を進めやすくなります。

 
大きな組織の改革は、一般的には膨大なエネルギーを必要とし、相当の覚悟を必要とする程の難問であります。 しかし

前述の通り、生産現場の改革、即ち従来の生産の仕方をトヨタ
生産方式に転換することから着手し、ここを改革の主舞台とし

推進していくことが、全組織
の改革を進める上で極めて有効であります。

 
トヨタ生産方式は、現在では世界中の生産現場で、何らかの形で取り上げられている。 しかし、世間で注目されている

“無駄取りや在庫削減”を主題とした、トヨタ生産方式ではな
く、従来の生産方式と異なる組織の形態と、その運用方法に

よって機能している、トヨタ生
産方式に着目しなければなりません。

 
これ等の“無駄取りや在庫削減”は間接部門の職場における“無駄取りや経費削減”活動に類するもので、会社そのもの

の真の体質強化には結びつかない。多くの“無駄”や“在庫”
は人々が力一杯働けない組織や運用の悪さに原因があります。

従って人を生かすことによっ
て“無駄”や“在庫”は 自然と無くなり、それはとったり削減したりするのではありません。

 
このように、会社全組織を全員参加型に変えるにあたり、留意すべきトヨタ生産方式の特徴的な組織形態とその運用方法

について以下に述べます。

 
なお 生産現場をトヨタ生産方式に変えるための、具体的な進め方については、拙著「実践トヨタ生産方式」を参考にして頂

きたい。

(以下次号)


                                                                      以上


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