発行者 株式会社岩城生産システム研究所

 編集者 有限会社IPSインターナショナル
   平成18年07月01日発行 第021号
 お知らせ

「岩城生産システム研究所NEWS」第21号を発行させていただきます。

おかげさまで当ホームページも開設1周年を向かえることができました。

今回より弊社・岩城 宏一のコラム「全員参加による経営活動の薦め」シリーズを掲載させていただきますので、引き続きどうぞ

宜しくお願い致します。

                                                                      業務部




「コンサルタントのひとりごと」
滑竢髏カ産システム研究所  岩城 宏一

 
全員参加による経営活動の薦め


1、はじめに

ここ数年来、私は北は北海道から南は鹿児島まで、殆ど毎日旅をしながら多くの会社や人々との出会いを続けている。
その間に出会った人々は、恐らく過去40年間に出会った人々の数を遥かに越えているだろう。頂いた名刺だけでも千数百枚
以上になる。これらの多くの人々は、今日のハイテク社会を実際に築いてきた電気業界で活躍している人達である。

 
今日まで、世界の経済拡大の牽引車であったこれ等の業界も、最近ではどちらかといえばローテク産業に比較し苦戦を強
いられている。何らかの抜本的な打開策が必要であるが、その有効な手掛かりさえ、つかみきれてないように見受けられる。

 
時計産業や自動車産業などの、どちらかと言えばローテク的な製造業の中で育った私にとっては、これらの会社や人々と
の出会いは、両者を比較し各々の問題点を理解する上での貴重な場所となってきた。以下に両者を比較しながら、ハイテク
社会飛躍のための打開策について考察してみる。

 
両者の比較上まず目に付くことは、経営上の重点がローテクではより良い原価、より良い品質を実現することにあり、ハイ
テクを中心とした電機業界では新製品開発に、非常に大きなウエイトを置いているように思う。

 
即ち、電気業界は新製品を売り出すことによって売上を増やし、それによって予算上の利益を確保することを指向し、ロー
テク経営は、原価、品質を改善することによって、新製品がなくても必要な収益は確保していくことを指向している。この善悪
はともかくとして、両者の経営指向の違いは、今日までの両者の経営環境の違いに根ざしていることが容易に推測できる。

 
時計や自動車等のローテク社会の製品も、コンピュータなどのハイテクを武器に、製品そのものは大きく内容は変わって
きている。しかし時計は、掛け時計、目覚まし、腕時計等々昔のままの状態で使われ、車も同様ガソリン車から、ハイブリッド
車、電気自動車等々内容の進歩顕著であるが、ハンドルをきり、走って停まることの基本機能は昔のままで変わらない。
そのため原価、品質の優位性は競合上、極めて重要な要素であり、経営上も当然避けて通れない問題であった。

 
一方ハイテク社会はご存知のように、全く新しい基本機能を次から次に生み出し、通信、交通、金融、医療機、ゲーム等々
あらゆる分野において、旧来の様式を根底から変えてきている。これらの出現は、社会に対し大きなインパクト与えたばかり
でなく、それを世に送った会社に対しても、大きなビジネスチャンスをもたらした。またそのチャンスは、会社の中の少々な
問題は飲み込み、会社の収益を一気に回復してきている。このことは当然のこととして、新製品開発が経営の至上命題と
なり、結果的にその他の経営施策が、軽視されがちになっている。

“会社を構成する全員が組織的に機能し、目標の実現に向かって一所懸命に働いている”

このことを社内に実現することは、総ての経営施策に優先し、個々施策を展開する上での重要な前提条件である。

 
このような視点で見るとき、筆者の懸念は、経営の選択肢が新製品開発という個々の分野に偏重し過ぎることである。
新製品開発は、プロジェクト等の小人数のグループや研究者などの、比較的小さな組織によって行われている場合が多い。
そのため、全員を如何に組織的に機能させるかという点についての、経営的な関心が希薄になり、そのために必要な経営
施策が、手付かずのままになっている場合が非常に多い。

 
さらに最近目に付くことは、会社全体の活動が、毎期ごとの予算を如何に達成していくかに終始しているきらいがある。
そのことも全体の組織活動の展開にとって、重要な阻害要因の一つである。

 
私の知る限りでは、そのような会社では、会社全体が有効に機能していないため、少なくとも50%以上の人々が、能力
を発揮できないままになっている。それによる組織全体の無駄は驚く程大きい。恐らくトヨタ生産方式への転換によって、
生産工場が3倍、4倍の生産性の向上をしたように、間接部門を含む全社についても、同じように飛躍的な生産性の向上を
期待することができるだろう。

 
大きな組織において、大勢の人達が一糸乱れず会社目標に向かって連携し、仕事をしている状態を実現するためには、
それに必要な組織づくりに、非常に長期間にわたっての経営努力が必要である。そのため、その経営目標は比較的長中期
的なものになり、またそれを実現する為の基本方策も長期間継続するものになる。

 
例えば、 “世界最強のものつくりを実現する” という目標を目指し、従来の生産の仕方をトヨタ生産方式に変えるための
基本方策として、“品物が移動する全ての工程を品物の流れでつなぎ、生産系を自律的に機能する一つのシステムとして
構成する”を行ってきたが、これが実際の生産現場に一応の形として見えるまでには、数年の活動の継続が必要であった。
このこと等はその好例であろう。 (以下次号に続く)

                                                                   以上


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